特許を巡る争い<76>三和酒類株式会社・GABA用途特許

特許第6947495号は、GABAを有効成分として含む、継続摂取することで活気や活力を向上させる組成物に関する。新規事項追加、サポート要件・明確性要件の違反、進歩性欠如の理由で異議申立されたが、いずれの理由も認められず、権利維持された。

三和酒類株式会社 の特許第6947495号“GABAを有効成分とする活気および/または活力向上剤”を取り上げる。

特許公報に記載された特許第6947495号の特許請求の範囲は、以下の通りである

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-6947495/EC8104E98607A8540BB1DB32AECB8A8C8832F7E9F5155320AF53D41C90A39018/15/ja)。

【請求項1】

GABAを有効成分として含む(ただし、トリプトファン、テアニンおよびGABAを有効成分として含むものを除く)ことを特徴とする、

POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力を向上し、かつ、

日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人に対して、少なくとも6週間継続して毎日100~3000mgの一日摂取量で経口投与される、

体外からGABAを摂取させるための、

POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力の向上剤。

【請求項2】~【請求項4】

本特許明細書には、“本発明の活気および/または活力向上のために体外から摂取させる「ギャバ」”(GABA)とは、“”γ-アミノ酪酸(γ-amino  butyric  acid)の略称である“と記載されている。

また、本特許発明の有効性評価として用いられている“POMS(登録商標)2-AS“について、

“POMS(登録商標)2は世界的に信頼されている心理検POMS(登録商標)の改訂版であり、「怒り-敵意」「混乱-当惑」「抑うつ-落ち込み」「疲労-無気力」「緊張-不安」「活気-活力」「友好」の7尺度と、ネガティブな気分状態を総合的に表す「TMDスコア」から、所定の時間枠における気分状態を評価するものである“と記載されている。

そして、

本発明では、ストレス、睡眠の質、疲労の主観的評価に及ぼす影響を検討する主要評価項目として、POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)の変化量を測定した。これは、生体におけるポジティブな気分を改善する効果が示される。そのため、活気-活力(VA)の変化量を測定することで生体のストレス状態を直接的に把握できるものとしてこの測定方式を採用した”と記載されている。

本特許発明を用いることによって、

“GABAを有効成分として含む活気および/または活力向上剤、特に日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人を対象とする活気および/または活力向上剤、食品添加剤および飲食品組成物、ならびに、その製造方法を提供することができる”と記載されている。

公開特許公報に記載された特許請求の範囲は、以下の通りである(特開2018-20972

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2018-020972/EC8104E98607A8540BB1DB32AECB8A8C8832F7E9F5155320AF53D41C90A39018/11/ja)。

【請求項1】

GABAを有効成分として含むことを特徴とする、

体外からGABAを摂取させるための活気および/または活力向上剤。

【請求項2】~【請求項10】

請求項1は、公開公報記載の請求項1に対して、以下の補正が行われて特許査定を受けている。

除くクレーム形式(ただし、トリプトファン、テアニンおよびGABAを有効成分として含むものを除く)

用途限定(POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力を向上)

用法用量の限定(日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人に対して、少なくとも6週間継続して毎日100~3000mgの一日摂取量で経口投与される)

特許公報の発行日(令和3年10月13日)の半年後(令和4年4月13日)、一個人名で異議申立てがなされた(異議2022-700309

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-6947495/EC8104E98607A8540BB1DB32AECB8A8C8832F7E9F5155320AF53D41C90A39018/15/ja)。

審理の結論は、以下であった。

“特許第6947495号の請求項1~4に係る特許を維持する。”

異議申立人は、甲第1号証~甲第9号証を証拠として提出し、以下の5つの申立理由により、本件特許は取り消されるべきものであると主張した。

(1)申立理由1:新規事項の追加

“令和3年6月1日提出の手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、新規事項の追加に該当”する。

(2)申立理由2:サポート要件違反

“本件発明1~4は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではな”い。

(3)申立理由3:明確性要件違反

“本件発明1~4は明確ではな”い。

(4)申立理由4:甲1を主引用例とする進歩性欠如

“本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び甲3~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであ”る。

甲第1号証(甲1):特開2007-31309号公報

(5)申立理由5:甲2を主引用例とする進歩性欠如

“本件発明1~4は、甲2に記載された発明及び甲8~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであ”る。

甲第2号証(甲2):Food  Sci.Biotechnol.,2016年,Vol.25,No.2,p547-551

以下、本特許発明の請求項1に係る発明(本件発明1)に絞って、審理内容を紹介する。

(1)申立理由1:新規事項の追加

申立人は、“令和3年6月1日提出の手続補正書でした補正は、請求項1~3並びに明細書の【0009】、【0010】及び【0011】に「少なくとも6週間継続して毎日100~3000mgの一日摂取量で経口投与される」との事項を追加したものであって、これは、新規事項を追加するものである”と主張した。

令和3年6月1日提出の手続補正書における請求項1の補正箇所は、以下の下線部分である。

【請求項1】

GABAを有効成分として含む(ただし、トリプトファン、テアニンおよびGABAを 有効成分として含むものを除く)ことを特徴とする、

POMS(登録商標)2-ASの活 気-活力(VA)評価による活気および/または活力を向上し、かつ、

日ごろから睡眠の 不調および疲労を感じている人に対して、少なくとも6週間継続して毎日100~300 0mgの一日摂取量で経口投与される、

体外からGABAを摂取させるための、

POMS (登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力の向上剤 。

申立人は、 “POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)において統計学的に優位な差が認められたのは摂取6週間の時点のみであり、8週目以降は統計学的な有意差が認められていないから、このような記載を根拠として「少なくとも6週間継続」して毎日投与するという事項を導き出すことはできない旨”などを主張した。

上記主張に対して、審判官は、以下のように判断した。

・“発明の具体的態様として、当初明細書等の実施例1には、臨床試験において、試験食品として、GABA100mgを主成分として含有するカプセル1日1回1カプセルずつを、12週間にわたって毎日連続摂取させたところ、

POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価において、事前検査値(0週)と比較して、全検査時点(2~12週)で摂取前からの改善の幅がプラセボ群に比べて大きく、摂取6週目では統計的に有意差が認められたことが記載されており、

実施例1では、上記カプセルは6週間を越えて12週目まで摂取させている。

また、GABAは、飲食品の形態としても摂取されるものであり、長期間にわたって毎日連続摂取されることも想定されていたといえる。

そうすると、POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)において統計学的に有意差が認められたのは摂取6週目の時点のみであるとしても、

6週目以降を含む2~12週で摂取前からの改善の幅がプラセボ群に比べて大きいことが記載されているので、

GABAの一日摂取量である10~3000mgを、「少なくとも6週間継続」して投与することは、当初明細書等に記載されていた範囲内の事項であり、新たな技術的事項を導入するものではない。

上記理由から、審判官は、“申立人が指摘する上記補正は、当初明細書等に記載された範囲内のものであり、新規事項を追加するものではないから、申立理由1には、理由がない”と結論した。

(2 )申立理由2:サポート要件違反

申立人は、“概略、以下の理由で、本件発明1~4は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない”と主張した。

理由(i):“有意差を伴ってPOMS2―ASの活気一活力を向上させたことが示されているのは、毎日100mgのGABAを投与して6週間後の時点のみであり、本件発明の「少なくとも6週間」の全ての時点(例えば、10週間後)において本件発明の課題が解決できると理解することはできない。”

理由(ii):“実施例で使用された「アミノヘルス『ギャバ』」(甲7)はGABAだけでなく、L-テアニンも含み、実施例の表3の効果が、GABA単独によって奏されるのか不明であるから、本件発明の課題をGABA単独の投与で解決できると理解することはできない。”

上記した理由(i)理由(ii)について、審判官は、以下のように判断した。

理由 (i)について

・本特許明細書の“発明の詳細な説明の実施例1には“、“GABA100mgを主成分として含有するカプセルを、1日1回1カプセルずつ12週間にわたって毎日連続摂取させたところ、

POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気及び/又は活力が、事前検査値(0週)と比較して、全検査時点(2~12週)で摂取前からの改善の幅がプラセボ群に比べて大きくなったことが記載されている。

・本特許明細書の“表3に有意差(p<0.05)を伴ってPOMS2―ASの活気一活力を向上させたことが示されているのは、毎日100mgのGABAを投与して6週間後の時点のみではあるが、

実施例1には、「全検査時点で摂取前からの改善の幅がプラセボ群に比べて大き」かったこと(【0037】)が明記されているし“、

表3では、GABA摂取の6週以降”、“GABA摂取群では、プラセボ群よりも試験された全期間(2~12週)にわたって、改善の幅(変化率)が大きくなって”いる。

・“その上、プラセボ群と比較したp値は”、“一般的な「有意」の指標とされるp値(0.05未満)を満たすのは6週のみではあるものの、

8~12週では、p値が概ね0.1程度で推移しており、12週では一般的な有意の指標値の値とほぼ同程度である。

・“そうすると、表3における10週目の時点における結果を含め、6~12週の時点での全ての結果の記載、及び【0037】を含めた発明の詳細な説明の記載全体から、

GABAを少なくとも6週間継続して摂取することで、プラセボ群に比べて、POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気及び/又は活力が改善できることを、当業者は十分理解できるといえる。

理由(ii)について

・ “臨床試験においてGABA群に投与された試験食品である、アミノヘルス(有)製の市販商品である「ギャバ」カプセルは”、“GABA以外にL-テアニンを含むものであるところ、本件明細書の記載によれば、プラセボ(食品)群は、「GABAの代わりに澱粉を含有させたもの」(【0025】)であるから、「ギャバ」カプセル中のGABAのみを澱粉に置き換えただけのものと理解できる。

・ “そうすると、プラセボ群とGABA摂取群とに投与した成分の違いは、GABAの有無のみであるから、当業者は、発明の詳細な説明の記載、特に、実施例1の記載全体から、【表3】に示される効果が、試験食品にL-テアニン等の他の成分が含有されていることによるものではなく、GABA自体による効果であると理解できる。

上記理由から、審判官は、“本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、申立理由2には、理由がない“と結論した。

(3 )申立理由3:明確性要件違反

申立人は、“概略、以下の理由で本件発明1~4は明確ではないと”主張した。

理由(i)“「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」”の定義が明確でない。

理由(ii)“「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」が、明細書の【0024】に記載の臨床試験の登録基準の対象者であると解釈しても、その対象が除外基準から除外された対象であるか不明である。

なお、【0024】に記載されている除外基準の一例は、GABAを強化した食品や健康食品、医薬部外品、一般医薬品を常用している者である。

理由(iii)“「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」が、明細書の【0024】に記載の、アテネ式不眠尺度(AIS)が6点以上、POMS(登録商標)2-ASにの「疲労一無気力(FI)」のTスコアが50点以上かつ「活気一活力(VA)」のTスコアが50点以下である対象であるとした場合、対象者は、実際にこれらの評価で確認された対象であるのか、実際の確認はされていないものの、潜在的にこれらのスコアを満たす者も含めて対象としているのかが明確ではない。

上記した理由(i)~(iii)について、審判官は、以下のように判断した。

理由(i)について

・ “ 請求項1等の「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」との記載において、「感じている」のは「睡眠の不調および疲労」であり、その「睡眠の不調および疲労」の両方を「日ごろから」「感じている」ものであると理解するのが相当である。そうすると、「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」が「日ごろから睡眠の不調を感じ、かつ日ごろから、疲労を感じている人」であることは、明らかである。

・ “また、上記記載における「日ごろから」とは、徹夜が続いた後に起こる一時的な睡眠不調や、激しい筋トレの後に感じる一時的な疲労といった、「一時的な睡眠不調」や「一時的な疲労」を有する対象ではなく、「慢性的な睡眠不調」や「慢性的な疲労」を感じている人であることも明らかである。

理由 (ii)及び理由(iii)について

「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」 の代表例には、”実施例1の臨床試験の被験者とされている、過去1ヶ月間に少なくとも週3回以上あてはまる症状である項目の得点を指標とした(【0027】)AISが6点以上であり、かつ、POMS(登録商標)2-ASの「疲労一無気力(FI)」のTスコアが50点以上かつ「活気一活力(VA)」のTスコアが50点以下である対象が含まれている(【0024】の「1.1  登録基準」)とはいえるが、

本件発明の対象は、請求項1等に記載されるとおり、「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」であれば足り、本件明細書の記載を参酌しても、上記登録基準を満たす対象に限定されると解釈すべき根拠はないし、また、除外基準に該当する人が除かれると解釈すべき根拠もない。

したがって、本件発明1~4における「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」は明確である。

上記理由から、審判官は、“本件発明1~4は、明確であり、申立理由3には、理由がない”と結論した。

(4)  申立理由4:甲1を主引用例とする進歩性欠如

審判官は、本件発明1と甲第1号証記載の発明(甲1発明)とを対比して、以下の一致点及び相違点を認めた。

<一致点>

“GABAを有効成分として含む(ただし、トリプトファン、テアニンおよびGABAを有効成分として含むものを除く)、POMS(登録商標)の活気評価による活気を向上し、かつ、人に継続して毎日一日摂取量が経口投与される、体外からGABAを摂取させるための、POMS(登録商標)の活気評価による活気の向上剤”

<相違点1>

“POMS(登録商標)の活気評価による活気の向上剤を投与される人が、本件発明1では「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」であるのに対し、甲1発明では「強いストレスを自覚している被験者」である点”

<相違点2>

“POMS(登録商標)の活気評価による活気の向上剤が、本件発明1では、GABAの一日摂取量「100~3000mg」で投与され、継続して毎日の投与が「少なくとも6週間」行われるのに対し、甲1発明では、GABAの一日摂取量「50mg」で投与され、継続して毎日の投与が「1ヶ月」行われる点”

<相違点3>    省略

申立人は、“相違点2に関し、GABAの1日投与量100mgというのはごく一般的な投与量であるし”、“GABAは継続的に長期間摂取するものであるから、投与期間を甲1発明の1ヶ月から、本件発明1のように6週間に延長することは当業者が容易に想到し得る事項である旨主張“した。

審判官は、相違点1及び2について、以下のように判断した。

・  “甲1の請求項1に、「トリプトファン、テアニンおよびγ-アミノ酪酸を有効成分として含有する抗ストレス組成物。」(摘記1b)と記載されるとおり、甲1の請求項1に係る発明は、有効成分としてトリプトファン、L-テアニン及びγ-アミノ酪酸の3成分を必須成分として含有する抗ストレス組成物の発明である”。

・“甲1の実施例6(摘記1e)には、3成分の有効成分のうち2成分のみを75mgずつ含むドリンク剤の毎日2週間の摂取の結果、「3つの有効成分のうちいずれか1成分でも欠如すると、ストレスを有効に解消することができず、むしろ悪影響を与える場合があることが分かった」ことも記載されている”。

・“そうすると、上記の甲1の記載を含め、甲1の記載全体に接した当業者が、3成分を併用した組成物ではなく、あえて、有効成分としてGABAのみを含有する比較例7のドリンク剤Iに注目し、その上、GABAの投与量を、甲1に具体的なGABAの投与量としては記載のない「100~3000mg」の一日摂取量に調整するとともに、投与日数を、甲1に具体的な記載のない「少なくとも6週間」として、甲1発明を、本件発明1の相違点2を備えた組成物とすることを動機付けられるとはいえない。

申立人が提出した他のいずれの証拠にも、甲1に記載される、有効成分としてGABAのみを含有する比較例7のドリンク剤I(甲1発明)に注目して、一日摂取量及び投与日数を調整することを当業者に動機付けるような記載はない。

本発明の奏する効果は、“甲1発明及び甲3~6を含め申立人が提出した証拠からは予測できない効果である。“

以上の理由などから、審判官は、“他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1について、甲1発明及び甲3~6の記載から、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない”と結論した。

(5)申立理由5:甲2を主引用例とする進歩性欠如

審判官は、 本件発明1と甲2発明とを対比して、以下の一致点及び相違点を認めた。

<一致点>

“GABAを有効成分として含む、人に継続して毎日100~3000mgの一日摂取量で経口投与される、体外からGABAを摂取させるための組成物。”

<相違点5>

本件発明1では、GABAを有効成分として含む組成物を投与される人が、「日ごろから睡眠の不調および疲労を感じている人」であり、GABAを有効成分として含む組成物が、「POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力を向上」するための「POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力の向上剤」であるのに対し、

甲2発明では、GABAを有効成分として含む組成物を投与される人が、「ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)スコアが6以上で、軽度の睡眠障害の疑いがある被験者」であり、GABAを有効成分として含む組成物が、「入眠潜時を短縮し、かつ、ノンレム睡眠時間の合計を増加させる、睡眠改善効果を有するGABA粉末」である点。  “

<相違点6> 省略

<相違点7>  省略“

申立人は、甲8及び甲9の記載から、甲2発明の「PSQIスコアが6以上」の被験者は、「POMS2-ASの『疲労無気力(FI)』のTスコアが50点以上かつ『活気一活力(VA)』のTスコアが50点以下」を満たす蓋然性が高いから”、 “甲2発明においても、睡眠の質が向上することによって自動的にPOMS(登録商標)2-ASのVAスコアも向上することになる蓋然性が高く、相違点5は実質的には相違点ではない旨主張“した。

審判官は、相違点5について、以下のように判断した。

・” 甲2発明でGABA粉末を投与される対象は、「軽度の睡眠障害が疑われる被験者」であって“、甲2には、当該被験者が”慢性的な睡眠不調及び慢性的な疲労を感じている対象であることは記載されていないし、「軽度の睡眠障害が疑われる被験者」に「慢性的な睡眠不調及び疲労を感じている人」が含まれることが本件特許の出願時の技術常識であったとも解されない。

・”甲2発明のGABA粉末は、「入眠潜時を短縮し、かつ、ノンレム睡眠時間の合計を増加させる、睡眠改善効果を有する」ものであるところ、入眠潜時を短縮し、ノンレム睡眠時間の合計を増加させる、睡眠改善効果を有する組成物であれば、「POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力を向上」するための「POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力の向上剤」として有用であるとの、本件特許の出願時の技術常識があったとも解されない。

・“申立人が提出したいずれの証拠にも、甲2発明のGABA粉末を、「POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力を向上」するための「POMS(登録商標)2-ASの活気-活力(VA)評価による活気および/または活力の向上剤」とすることを動機付ける記載はない。

・“したがって、甲8~9を含め、申立人が提出したいずれの証拠を検討しても、甲2発明を相違点5に係る本件発明2の構成を備えるものとすることを、当業者が動機付けられるとはいえない。

以上の理由から、審判官は、“他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1について、甲2発明及び甲8~9の記載から、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない”と結論した。