東洋水産の特許第5153964号は、簡単且つ短時間で良好に調理可能な「乾麺およびその製造方法」の特許。日清食品ホールディングスは無効審判請求し、請求項1は無効と認められたが、請求項2以下は無効とはならなかった。そこで、請求項2以下の無効を求めて知財高裁に提訴したが、無効とはならなかった。
特許抗争の事例として、東洋水産株式会社の特許第5153964号「乾麺およびその製造方法」を取り上げる。
特許第5153964号の特許請求の範囲は、以下のようである。
(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_5153964/C5B8054A9911DEB9E97BE7BE45EC1763)。
【請求項1】麺の断面積の空隙率が0.1%以上15%以下であり、
麺の断面積の単位空隙率が0.01%以上1%以下であり、
30%~75%の糊化度と多孔質構造とを有した乾麺。
【請求項2】主原料と、
前記主原料の総重量に対して0.5重量%よりも大きく6重量%未満の100%油由来の
粉末油脂とを含む麺生地から形成した生麺体を
90℃~150℃で発泡化および乾燥することを具備し、
最終糊化度が30%~75%の糊化度を有する乾麺の製造方法。
(請求項3以下、省略)
本発明の乾麺は、多孔質構造を有しているので、茹で時間が短く、
復元性と弾性に優れており、さらに、茹で戻し時のぬめりが抑制され、
麺を水洗せずに湯をそのままスープとして使用可能で、
簡単且つ短時間で良好に調理可能なことを特徴とすると記載されている。
本特許は、もともと国際出願されており(国際公開番号WO2012/002540、 国際公開平24.1)
国際公開後すぐに(平24.5)に日本への移行手続きがなされ、手続き後約4カ月の時点で
早期審査請求され、出願内容そのままの形で特許査定された(平24.11.20)。
その約2年後(平成27年1月平成26年12月26日)に
日清食品ホールディングス株式会社が無効審判請求した
(無効2015-800005、特許部分確定審決公報
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPZZH27800005/272D58495DB1CD3FA235090F28E42C44)。
無効審判の審理において、特許権者の東洋水産は訂正請求したが認められず、
特許査定された特許請求の範囲について、争われた。
審判において、請求項1の発明は、文献1(特公昭54-44731)記載の発明と比較して、文献1には、「空隙率」、「単位空隙率」及び「糊化度」の数値についての記載がない点で一応相違する。
しかし、提出された文献1の試験を追試した試験結果等から、請求項1の数値範囲内にある「蓋然性」(確からしさ)が高く、一応の相違点は、実質的な相違点ではなく、本件発明1は、甲1発明である、すなわち、新規性を欠如していると結論づけた。
また、請求項1の進歩性を否定された。
そして、その他の請求項も含めて、以下のように結論(審決)された。
「よって、本件発明1についての特許は、特許法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
一方、請求人の主張及び証拠方法によっては本件発明2~本件発明10についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法64条の規定により、その10分の9を請求人の負担とし、10分の1を被請求人の負担とすべきものとする。」
すなわち、上記無効審判において、請求項1は無効となったが、請求項2~請求項10は無効とはならなかった。
そこで、日清食品ホールディングスは、請求項2~請求項10の無効化のために、知的財産高等裁判所に、上記審決の取消を求めて提訴した(平29.1.13)。
平成29年(行ケ)第10013号 審決取消請求事件
http://www.hokutopat.com/wp/wp-content/themes/hokutopat/pdf/H29_gyo-ke_10013.pdf)
日清食品ホールディングスは、無効審判において進歩性とサポート要件違反の判断の誤りがあると主張した。
しかし、平成30年4月27日に判決が言渡され、日清食品ホールディングスの請求は棄却された。
(参考文献)