(53)特許を巡る争いの事例;キリン炭酸飲料特許(コーラ関連)

キリン・キリンビバレッジの特許第6030093号は、

高甘味度甘味料、カラメル組成物、および難消化性デキストリンを

含有する容器詰め炭酸飲料において、

カラメル色素などの副生成物(4-メチルイミダゾール)の含有量を

所定値に調整することによって、炭酸ガスの泡を長く保持させる飲料特許。

異議申立され、取消理由通知に対して、両社はいったん訂正を行って対抗したが、

再度の取消理由通知には反論せず、取り消された。

キリンとキリンビバレッジとが共有していた特許第6030093号『容器詰め炭酸飲料』を取り上げる。

本特許の特許請求の範囲は、以下のようである

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_6030093/FAC279934FE6E677AA31F37CF656EA04)。

【請求項1】

高甘味度甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料であって、

難消化性デキストリンを含有し、

かつ該飲料中の4-メチルイミダゾールの含有量が100ppb未満である、

容器詰め炭酸飲料。

(【請求項2】以下は、省略)

カラメル組成物は、実質的にカラメル色素などである。

カラメル色素は、

ブドウ糖や砂糖などの糖類などを加熱処理して得られる褐色の色素で、

食品添加物として、しょう油やソース、清涼飲料水などの

着色や風味付けの目的で使用されている

https://www.wdic.org/w/SCI/%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%AB%E8%89%B2%E7%B4%A0

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/shokuten/chakushokuryo.html)。

難消化性デキストリンは、水溶性食物繊維である。

4-メチルイミダゾール(4MI)は、

コーヒー豆の焙煎時や食肉をオーブンや直火で焼く際などに

加熱調理したときに生成される副生成物

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04110150105)、

本特許明細書中には、

4MIは、カラメル組成物(例えば、カラメル色素およびカラメル麦芽)の

製造過程において生成される物質であ」り、

「飲料中の4MIの含有量が200ppb未満であることを

特徴とするものであるから、

本発明の容器詰め炭酸飲料に含まれるカラメル組成物は、

4MIの含有量が比較的低いものを用いることが望ましい。」

と書かれている。

そして、容器詰め炭酸飲料において、

4MIの含有量を所定値に調整することによって、

炭酸ガスにより形成される泡をより長く保持することが可能であると

書かれている。

本特許は、平成26年7月22日に出願され、

平成28年9月20日に特許査定を受け、

平成28年11月24日に特許公報が発行された。

公開公報(特開2015-43766号公報)の特許請求の範囲は以下のようであり

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H27043766/F706D0AE8622646897F33656D3E7C2A1)、

【請求項1】
甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料であって、

難消化性デキストリンを含有し、

かつ該飲料中の4-メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満である、

容器詰め炭酸飲料。

「甘味料」を「高甘味度甘味料」に限定し、

飲料中の4-メチルイミダゾールの含有量を「200ppb未満」と

数値限定したことによって、特許査定を受けている。

特許公報が発行されてちょうど6カ月後に、

一個人名で異議申立された(異議2017-700505)

審理の結論は、以下のようであった。

「特許第6030093号の特許請求の範囲を

訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、

訂正後の請求項〔1〜6〕、7、8について訂正することを認める。

特許第6030093号の請求項1〜7に係る特許を取り消す。

特許第6030093号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。」

取り消しの理由は、

「特許第6030093号の請求項1〜7に係る発明は

平成29年11月27日付け訂正請求書に添付された

訂正特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により

特定されるとおりのものであると認める。

これに対して、

平成30年3月30日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、

期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、

特許権者からは応答がなかった。

そして、

上記の取消理由(決定の予告)は妥当なものと認められるので、

本件請求項1〜7に係る特許は、

この取消理由によって取り消すべきものである。

また、請求項8に係る特許は、訂正により、削除されたため、

本件特許の請求項8に対して、

特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。」

キリンとキリンビバレッジは、取消理由通知に対して、

いったんは応答(意見書の提出、訂正の請求)したものの、

2回目の取消理由通知に対して応答しなかったため、

取り消しと決定されたようである。

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/seido/tokkyo/tetuzuki/shinpan/tokkyo-igi/pdf/index/flow_kani.pdf

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11164811/www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/sinpan-binran_16/67-05_5.pdf)。

キリンとキリンビバレッジが応答しなかった理由は、

取消理由に対して反論が難しかったことが考えられる。

ちなみに、4MIは食品中の発がん物質として、ネット上を賑わし、

コーラには4MIが含まれていると名指しされたことのある成分である

(コーラやノンアルコールビール、スーパーの惣菜は要注意!

発がん性物質を含むカラメル色素が野放し!カップ麺も

https://biz-journal.jp/2016/05/post_15033.html

日本のコーラの発ガン性物質は、カリフォルニアの18倍!!

ペプシの香料は中絶した胎児の体細胞!!

https://ameblo.jp/shig1956/entry-12399086510.html)。

本特許では、4MIの量を低減することが有効という内容であり、

実施例では、4MIを除去する処理したカラメル色素の方を用いた方が

よい成績が得られている。

また、

4MIは、一日許容摂取量が設定されており、

FDA(米国食品医薬品庁)は

「当面、4-MEIへの心配から消費者が食事を変えることを勧めるものではない」とし、

EFSA(欧州食品安全機関)は、

「食品中のカラメル色素の使用に起因する欧州人の4-MEI暴露について、

何ら懸念はないと結論している」という見解のようである。

(「カラメル色素の食品への利用と安全性」 東京聖栄大学紀要_第10号

https://tsc.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=3835&item_no=1&page_id=13&block_id=45

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04110150105

https://www.wdic.org/w/SCI/%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%AB%E8%89%B2%E7%B4%A0)。