【9】無効資料調査の前段階(1)その時点で有効な特許請求の範囲の確認

権利範囲(「特許請求の範囲」)は、審査や審判の過程で変化し得るものであり、

無効資料調査に着手する前に、リーガル・ステータスの確認とともに、

その時点で有効な最新の特許請求の範囲を確認することは必須である。

無効資料調査は、「特許請求の範囲」に記載された各請求項の無効性(あるいは有効性)についての資料調査である。

「特許請求の範囲」が審査や審判の過程で変化することは特別なことではなく、特許公報に記載された「特許請求の範囲」にしても、絶対的なものではなく、変化し得るものである。

したがって、「邪魔な特許」が見つかったら、その特許のリーガル・ステータス(法的、存続、および生死状態)の確認とともに、最新の特許請求の範囲を確認することが必須になる。

たとえば、出願時の特許請求の範囲は、審査請求前や審査請求時に補正されることもあるし、審査中に拒絶理由を解消するために補正されることは、一般的に行われていることである。

特許査定になり登録され、特許公報が発行されていても、異議申立や無効審判の審理の過程で、取消理由や無効理由を解消するために、特許請求の範囲が訂正されることも一般的なことである。

また、無効理由があることに自ら気がつくことなどの理由により、自発的に訂正請求を行い、特許請求の範囲を訂正することもある。

リーガルステータスや最新の特許請求の範囲は、JPlatPatなどのデータベースを使って調べることができる。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp マニュアルは、http://www.inpit.go.jp/content/100863829.pdf)。

各特許文献のウエブページには、「経過情報」と「審査書類情報」のタブがある。

「経過情報」には、「基本項目」、「出願情報」、「審判情報」、「登録情報」の4つのタブがある。

「基本項目」には、「出願細項目記事」、「審判記事」、「登録記事」の項目があり、

法的な状態が分かる。

ただし、権利の状態の更新は、登録原簿の更新から3~4週間ほどタイムラグがあるとのことなので、この点、留意しておく必要がある。

「出願情報」の「審査記録」には、審査経過が記載されており、同様に「審判記事」の「審判記録」には、審判経過が記載されている。

審査記録や審判記録に記載された各手続の内容は、多岐に亘っており、理解のためには、審査や審判のプロセスを理解した上で、少なくとも審査や審判の主要な手続きについては、具体的に理解しておく必要がある。

(参考 特許・実用新案審査ハンドブック https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/handbook_shinsa.htm

審判便覧(改訂第17版) http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/sinpan-binran_17/all.pdf 

特許検索情報の見方 https://www.ryupat.com/patent-mikata/

審査記録 中間コード (JP) https://patentfield.com/help/data-apm-examine-codes-format

審判記録 中間コード (JP) https://patentfield.com/help/data-aem-appeal-codes-format)。

「特許請求の範囲」に関連する手続きには、手続補正や訂正請求があるので、審査経過や審判経過を見て、これらの手続きを追っていくことにより、最新の「特許請求の範囲」を確認できる。なお、分割出願という手段もあるので、留意する。

同時に、期限が定められている手続については、日付に注意したい。

手続期間や通常の審査期間や審理期間を知っておくことにより、時間的余裕がどの程度あるかの予測にもつながる。

たとえば、審査において、

拒絶理由通知の応答期限は、拒絶理由通知の発送日60日であるが、簡単な手続で2月延長可能であるとか、特許査定になっても、謄本の送達があった日から原則30日以内に特許料を納付しないと出願が却下されるが、期間延長請求書を提出することによって、30日延長できる。

こうしたことを考慮していないと、生死状態を早合点してしまうリスクがある。

また、審判において、

拒絶査定になって拒絶査定不服審判請求できる期限は、送達日から3月であるとか、異議申立が可能な期間は、特許掲載公報発行の日から6月以内であるとか、無効審判の審決取消訴訟の裁判所への出訴期間が、審決謄本送達日から30日であるとか。

一旦決着がついたと思っても、次のステップに移って継続する可能性があれば、それを考慮して対応していく必要が出てくる。

(参考 Ⅱ 主要期間一覧表 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syutugan_tetuzuki/sanko_02.pdf )。

審査や審理が進めば、さらに特許請求の範囲が変わる可能性もあるので、調査後も、経過情報を”WATCHING”(継続観察)する必要がある。