(52)特許を巡る争いの事例;ルテイン含有飲料特許

アサヒ飲料の特許第6132947号は、飲料中での、眼の保護や機能向上成分「ルテイン」の安定性を向上させる方法に関する。

異議申立されたが、飲料を「10℃超の常温流通及び保管用飲料」に限定する訂正を行うことにより、権利維持された。

アサヒ飲料株式会社の特許第6132947号

「飲料及びルテインの飲料中安定性を調節する方法」を取り上げる。

アサヒ飲料株式会社は、

ミツヤサイダー、十六茶、wondaなどを製造販売している(https://www.asahiinryo.co.jp/company/about/)。

「ルテイン」は、本特許明細書中には、

強力な抗酸化作用を持つカロテノイドの1種で、

ホウレンソウやケールなどの緑黄色野菜に多く含まれている。

このルテインは、眼の網膜の保護や治癒に有益な成分として知られており、

さらに眼の視覚機能向上、眼精疲労からくる肩こりや

全身の倦怠感の緩和にも効果を発揮することから、

飲料をはじめとする様々な食品に配合されている」

と説明されている。

特許第6132947号の特許請求の範囲は、以下のようである。

(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_6132947/9423E5832A32ADA2F621F787147ED4F5

【請求項1】

ルテインを含み、

前記ルテインの含有量が飲料に対して、

10ppm以上50ppm以下であり、

pH4.0以上(ただし、4.0は除く)4.8以下である飲料。

(【請求項2】以下は省略)

本特許明細書中には、

飲料に含有されるルテインは経時的に減少することが確認されており、

ルテインの安定性の向上が求められて」おり、

「本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、

ルテインの安定性に優れる飲料、この飲料を含む容器詰め飲料、

容器詰飲料の作製方法、及び容器詰飲料の流通又は保存方法、

並びにルテインの飲料中安定性を調節する方法を提供することを目的とする」

と書かれている。

本特許は、平成28年3月24日に出願、出願と同時に早期審査請求され、

平成29年4月28日に登録されて、

特許公報は、公開公報の公開日(平成29年9月28日)より前の

平成29年5月24日に発行された。

出願時の特許請求の範囲は、以下のようで、

ルテイン含有量の数値限定の追加およびpHの範囲を狭めることによって、

特許査定を受けている

(特開2017-169508

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H29169508/198ADF829BBE9F4612EAFBCA4E3C544C)。

【請求項1】

ルテインを含み、pH3.8以上4.8以下である飲料。

(【請求項2】以下は省略)

特許公報発行のほぼ半年後(平成29年11月20日)、

一個人名で異議申立された(異議2017-701088)

審理の結論は、

「特許第6132947号の特許請求の範囲を

訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,

訂正後の請求項〔1~6〕,7について訂正することを認める。

特許第6132947号の請求項1~7に係る特許を維持する。

というものであった。

訂正された特許請求の範囲は、以下のようであった。

【請求項1】

ルテインを含み,

前記ルテインの含有量が飲料に対して,

10ppm以上50ppm以下であり,

pH4.0以上(ただし,4.0は除く)4.8以下である,

10℃超の常温流通及び保管用飲料

(【請求項2】以下、省略)

特許査定された請求項1は「飲料」全般についての特許であったが、

「10℃超の常温流通及び保管用飲料」に限定されている。

審理では、新規性、進歩性、および記載要件(特許法36条)について争われたが、

いずれも異議申立人の主張は採用されず、権利維持された。