キリンビバレッジ株式会社の特許第5989560号「難消化性デキストリン含有容器詰め飲料
およ びその製造方法」は、キリンの「メッツコーラ」関連特許。個人名で異議申立されたが
キリンは、権利範囲を狭める訂正を行い、その結果、権利維持された。
特許抗争の事例として、キリンビバレッジ株式会社の特許第5989560号
「難消化性デキストリン含有容器詰め飲料およびその製造方法」を取り上げる。
平成26年1月30日に公開され、公開時(特開2014-14354)の特許請求の範囲は
以下であった(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H26014354/9AD827A1F51F050A1EB312A26F08CC50)。
【請求項1】カラメル組成物および高甘味度甘味料を含んでなる、
難消化性デキストリン含有容器詰め炭酸飲料。
【請求項2】難消化性デキストリンの含有量が1.6質量%以下である、
請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項3】難消化性デキストリンのDEが8以上20以下である、
請求項1または2に記載の容器詰め炭酸飲料。
また、「溶存二酸化炭素の抜けを低減することができる、難消化性デキストリン含有
容器詰め炭酸飲料の提供」を課題とした発明であった。
本出願は、新規性喪失の例外(特許法第30条第2項)の適用を受けている
(発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/hatumei_reigai.htm)。
原出願日は平成24年7月9日であるが、原出願日前の平成24年4月24日に
販売開始の「キリン メッツコーラ」で実施されている技術と思われる
(出足好調!食事の際に脂肪の吸収を抑える“特定保健用食品史上初のコーラ”
「キリン メッツ コーラ」発売後わずか2日で年間販売目標の5割を突破!
http://www.kirin.co.jp/company/news/2012/news2012042601.html)。
平成27年7月に早期審査請求され、平成28年7月に特許査定され、
特許第5989560号として登録された。
特許第5989560号の特許請求の範囲は、以下のようである
(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_5989560/4D98CDC307FCC4EFF3D3470E3A85A8C8)。
【請求項1】カラメル組成物および高甘味度甘味料を含んでなる、
難消化性デキストリン含有容器詰め炭酸飲料であって、
該飲料中の難消化性デキストリンの含有量が0.3~1.6質量%である、
炭酸飲料。
【請求項2】高甘味度甘味料が、アセスルファムカリウム、スクラロース、
およびアスパルテームからなる群から選ばれる1種または2種以上を含む、
請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
【請求項3】(省略)
【請求項4】(省略)
【請求項5】難消化性デキストリンのDEが8以上20以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の容器詰め炭酸飲料。
公開時と比較して、請求項1は、難消化性デキストリンの含有量について、
数値範囲の限定がかかっている。
本特許に対して、特許公報発行日の約5か月後の平成29年2月、
個人名で異議申立てされた(異議2017-700153
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JP14H29700153/0DB3BC9EBA821F71C121812692237A1E)。
審理の結論は、以下のようであった。
「特許第5989560号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された
訂正特許請求の範囲のとおり,〔1-15〕,〔16,17〕,〔18,19〕
について訂正することを認める。
特許第5989560号の請求項1,5ないし8,10,12ないし16及び18に
係る特許を維持する。
特許第5989560号の請求項2ないし4,9,11,17及び19に
係る特許についての特許異議の申立てを却下する。」
上記の「訂正特許請求の範囲」とは、
【請求項1】
カラメル組成物および高甘味度甘味料を含んでなる,
難消化性デキストリン含有容器詰め炭酸飲料であって,
該飲料中の難消化性デキストリンの含有量が0.8~1.5質量%であり,
該カラメル組成物がカラメル色素であり,かつ
該高甘味度甘味料がスクラロースまたはアスパルテームを含んでなる,
炭酸飲料。
【請求項2】~【請求項4】(削除)
【請求項5】難消化性デキストリンのDEが8以上20以下である,
請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。
(請求項6以下、省略)
特許査定された請求項1とは、難消化性デキストリン含有量の数値範囲、
および、カラメル組成物と高甘味度甘味料の種類が限定されている。
取消理由として、新規性、進歩性、実施可能要件およびサポート要件が検討されたが、
これらの理由で「取り消されるべきものとすることはできない」として、権利維持された。
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(参考文献)
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