【7】私の考える「邪魔な特許の潰し方」全体像

「邪魔な特許」が見つかった時には、特許請求の範囲と

侵害懸念のある商品や技術との対比を行い、

特許の技術的範囲に属するか否かの判定を行い、

侵害リスクが本当にあることを確認する。

次いで、

無効資料調査や訂正・補正の可能性の検討を行って、

特許を無効化できる可能性が高いか低いかを判断する。

無効化できる可能性が高ければ、

異議申立、無効審判請求や情報提供の

アクションを取る。

可能性が低ければ、前記アクションに加え、

抗弁の可能性、実施技術の中止・変更、

ライセンシングなどの侵害回避方法の検討を行う。

ここで私の考える「邪魔な特許の潰し方」の流れ

(フロー)を書いてみたい。

「邪魔な特許」とは事業の運営に支障を及ぼす

(障害となる)可能性が高い特許。

フローは、各ステップごとに書くが、

考え方を示すためのもので、

実際には前後することや省略可能な場合もある。

また、自分一人でやるにしても、

必要に応じて、経験者や専門家のアドバイス、

関連部署の協力を得ながら進めていくことになる。

ステップ1;侵害可能性の確認(属否判定)

A.その時点で最新の有効な特許請求の範囲の確認

経過情報を調べ、出願後、特許請求の範囲が

補正されていないか調べる。

異議申立、無効審判請求、訂正審判請求されていれば、

特許請求の範囲の訂正が行われていないか調べる。

上記によって、最新の特許請求の範囲を確認する。

B.最新の有効な特許請求の範囲(技術的範囲)の画定

各請求項を発明特定事項に分節する。

分節された言葉(用語)の意味が不明の場合は、

定義を確認する。

確認のためには、明細書記載の検討や

審査経過調査(包袋調査など)、

および

当該技術分野における出願時の技術水準(技術常識)

についての知識が必要になる。

C.侵害リスクのある商品・技術(イ号)の確認

イ号商品、イ号技術を特定する。

(「イ号」の参考文献

(4)判定請求手続の流れ

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/pdf/hantei2/hantei_04.pdf

知的財産用語辞典 http://www.furutani.co.jp/cgi-bin/term.cgi?title=%83C%8D%86%95%A8%8C%8F

侵害有無は、

特許請求の範囲に記載された発明特定事項(構成要件)との

対比によって判断する。

よくあるのが、

感覚的に嫌な特許だから潰したいという希望。

本当に障害となるかどうかは、

対比するもの(イ号)が明確でないと結論が出せない。

D.対比表の作成

請求項ごとに、

発明特定事項とイ号とを対比する。

対比は、「上位概念・下位概念」や「均等」の考え方を

含めて検討する。

対比によって、

イ号が請求項の発明特定事項をすべて充足するかどうかを判断し、

イ号が「邪魔な特許」の技術的範囲に属するか否かを判定する

属否判定)。

その結果、

特許請求の範囲に属する(可能性が高い)と判定されたら、

「邪魔な特許」を無効化することによって

侵害を回避できる可能性があるかどうか検討する。

なお、

対比は、次の無効資料調査の前段階の工程でもある。

ステップ2.侵害回避可能性検討

登録された特許であれば、以下のA~Cを検討し、

特許を無効化できるかどうかの可能性を判断する。

審査中や審査請求前の出願段階であれば、

「特許成立性」の検討を行う。

A.新規性欠如・進歩性欠如の無効理由の存在可能性;無効資料調査

(ここでは、成立性を抵触確認調査、無効性を無効資料調査と呼ぶ)

B.36条違反の可能性;サポート要件、実施可能要件、明確性要件

明細書の記載を精査する。

C.特許請求の範囲の補正・訂正の可能性検討

拒絶理由通知や上記Aの無効資料調査で見つかった文献をもとに

特許請求の範囲の減縮等で、特許権者(出願人)が

拒絶理由や無効理由を回避できるかどうか検討する

無効化できる可能性は、「高い」または「低い」で評価する。

A.高い

少なくとも、

特許に抵触しないような技術的範囲まで

権利範囲を狭められる可能性が高い。

審査段階であれば、

抵触するような形で特許が成立する可能性は低い。

B.低い

抵触しない技術的範囲まで権利範囲を狭めることは難しい。

審査段階であれば、

侵害するような形で特許が成立する可能性が高い。

上記判断は、事案の重要性や評価の難易度が高い場合には、

必要に応じて、弁理士等に鑑定依頼して確認を取る。

ステップ3.侵害回避のためのアクション

無効化できる可能性が高い、あるいは

特許成立性が低いと判断される場合には、

以下のアクションを検討する。

登録特許;異議申立、無効審判請求

審査段階(審査請求前・審査中);情報提供

また、

無効化困難と判断される場合、あるいは

特許成立性が高いと判断される場合は、

上記の異議申立、無効審判請求、および情報提供に加えて、

以下のA~Cの可能性を検討する。

A.無効以外の抗弁の検討(作用効果不奏功、用尽など)

B.製造仕様等の変更による権利範囲外へ、あるいは製造販売中止

C.出願人あるいは特許権者からの技術供与・ライセンシング

(参考

特許侵害訴訟における作用効果不奏功の主張(上)

http://www.chosakai.or.jp/intell/pat/contents17/201704/201704_5.pdf

特許侵害訴訟における作用効果不奏功の主張(下)

http://www.chosakai.or.jp/intell/pat/contents17/201706/201706_7.pdf

特許権の消尽(国内消尽)とは

https://business.bengo4.com/category5/practice871

黙示実施許諾 – 知的財産用語辞典

http://www.furutani.co.jp/cgi-bin/term.cgi?title=%96%D9%8E%A6%8E%C0%8E%7B%8B%96%91%F8

次回から、無効資料調査について、私の考えを具体的に述べていきたい。