(36)異議申立の事例1;パスタソース特許

異議申立の事例として、キユーピー株式会社の特許第5700507号「容器詰めタラコ含有ソース」がある。日本水産などが異議申立てしたが、権利維持された。パスタソースの製造で実施されている特許である。

異議申立の事例として、キユーピー株式会社の特許第5700507号「容器詰めタラコ含有ソース」を取り上げる。

「容器詰めタラコ含有ソース」は、パスタソース等として用いられる調理用ソースを指しており、「タラコ」には、「明太子」も含まれる。したがって、パスタ用の明太子ソースが権利範囲に含まれる。

本特許は、平成22年8月19日に出願され、以下のように3回の情報提供を受けたが、拒絶理由を解消し、特許査定され、平成27年4月15日に特許公報が発行された。

審査請求 平成25年4月18日

情報提供(刊行物等提出書) 平成25年9月25日

情報提供(刊行物等提出書) 平成25年10月11日

拒絶理由通知        平成26年5月7日

意見書・手続補正書     平成26年7月7日

情報提供(刊行物等提出書) 平成26年9月1日

特許査定          平成27年2月10日

出願時の請求項1は、以下のようであった。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H24039950/F6F8AB2BE56A0ABC998308EB54790010

【請求項1】

タラコ、バター及び蛋白加水分解物を含有し、

前記タラコ原料として、少なくとも水子及び真子が使用され、

水子と真子の含有割合が質量比で10:90~90:10であることを特徴とする

タラコ含有ソース。

一方、特許された請求項1は、以下のようで、「タラコ含有ソース」が、「容器詰め」の「タラコ含有ソース」に限定されている。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_5700507/452A2C76BE76DC657EA637566C3247FA

【請求項1】

タラコ、バター及び蛋白加水分解物を含有し、

前記タラコ原料として、少なくとも水子及び真子が使用され、

水子と真子の含有割合が質量比で10:90~90:10であることを特徴とする

容器詰めタラコ含有ソース。

タラコは、塩漬けされたスケトウダラ魚卵粒を指し、水子は放卵が始まっている卵巣、真子は放卵開始前の卵巣の意味である。

情報提供は3回行われているが、いずれも匿名である。

拒絶理由通知書を見ると、情報提供された文献の記載もあることから、情報提供の内容が審査団塊で考慮されたことが分かる。

特許査定を受けられた理由は、

「水子と真子の含有割合が質量比で10:90~90:10」をすることが記載された先行文献はなく、前記の割合にすることによって、

「保存後のタラコ風味とバターの風味のバランスが良好である」という顕著な効果が得られることは知られていなかったことにある。」ということである。

特許公報発行後の平成27年10月2日に日本水産株式会社、平成27年10月14日に埼玉県川越市の一個人から、異議の申立てがされた(異議2015-700053)。

いずれも、6カ月の申立て期限ぎりぎりの時期であった。

異議決定公報(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH27700053/5A755367951D9BA169CA494E03F3950D)によれば、申立人は、審査過程では引用されていなかった特許文献(特開2001―224344号公報)等を新たな証拠として提出して、当該特許は進歩性が欠如していると主張した。

特開2001―224344は、特許権者のキユーピー株式会社が出願した特許であり、常温で長期間保存でき、魚卵のツブツブした食感を保持し、魚卵風味が良好な「密封容器詰食品用魚卵組成物」に係る発明が記載されている。

この公開特許公報には、

「タラコ、バター及びアミノ酸調味料を含有し、タラコ成分としてスケトウダラの腹子から得られたバラタラコである、密封容器詰タラコパスタソース」の発明が記載されている。

しかし、

「水子と真子の含有割合が質量比で10:90~90:10」の割合に調整することにつながるような、積極的な動機付けとなるような記載はないこと、

そして、前記の質量比にすることによって、「長期保存した場合であっても、タラコ風味とバター風味のバランスがよいという顕著な効果を奏していることから、

審査段階と同様に、進歩性を有すると認めた。

そして、特許庁は、最終的に異議申立てを認めず、「特許を維持する」と結論した。

本特許に関連すると思われる商品が、キユーピー株式会社から販売されている。

キユーピー あえるパスタソース「たらこ」のニュースリリースには、「たらこのうま味とバターのコクを味わう“黄金比”を実現」と書かれている(https://www.kewpie.co.jp/company/corp/newsrelease/2018/03.html)。

そして、商品情報には、「たらことバターの黄金比とは? 特許配合「たらことバターのバランスのとれた味わい」の中で、さらにおいしさを追求した独自の比率です。(特許第5700507号)」と書かれており、原材料名は、「ソース:たらこ、・・・・・、バター、・・・・・・、動植物性たん白加水分解物、・・・・・・」と記載されている

https://www.kewpie.co.jp/products/product.php?j_cd=4901577020650)。

「キユーピー あえるパスタソース からし明太子」にも同様な記載がある。

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(引用文献)

特開2012-039950号公報

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H24039950/F6F8AB2BE56A0ABC998308EB54790010

特許5700507号公報 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_5700507/452A2C76BE76DC657EA637566C3247FA

異議2015-700053号公報

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH27700053/5A755367951D9BA169CA494E03F3950D

キユーピーアヲハタニュース 2018/01/16   No.3

https://www.kewpie.co.jp/company/corp/newsrelease/2018/03.html

キユーピー あえるパスタソース たらこ

https://www.kewpie.co.jp/products/product.php?j_cd=4901577020650

キユーピー あえるパスタソース からし明太子

https://www.kewpie.co.jp/products/product.php?j_cd=4901577020667

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