特許を巡る争い<7>サッポロホールディングス・豆乳発酵飲料特許

サッポロホールディングス株式会社の特許第5622879号「豆乳発酵飲料及びその製造方法」は、キッコーマンによる無効審判請求で無効となり、サッポロホールディングスはこの審決を不服として知財高裁に提訴していた。裁判で、サッポロは、先行技術との4つの相違点すべてが関連して、発明の効果が奏されると主張したが、主張自体に疑問があるとして退けられ、審決の判断に誤りはないとして、請求は棄却され、サッポロは敗訴。

サッポロホールディングス株式会社の特許第5622879号「豆乳発酵飲料及びその製造方法」を取り上げる。

本特許は、以前、“(48)特許を巡る争いの事例;豆乳発酵飲料特許(http://patent.mfworks.info/2018/08/26/post-1006/)で一度取り上げた特許で、キッコーマン株式会社から無効審判請求され、無効となった(無効2017-800013)。

サッポロホールディングス株式会社は、この審決を不服として、2018年6月5日、知的財産高等裁判所(知財高裁)に出訴した。

今回は、審決取消請求の訴訟の結果を紹介する。

上記審決取消請求(平成30年(行ケ)第10076号)に対して、2019年3月13日に判決が言渡されたhttp://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/529/088529_hanrei.pdf)。

主文は「原告の請求を棄却する。」で、サッポロホールディングス株式会社は敗訴した。

無効審判において、サッポロホールディングス株式会社は以下のように特許請求の範囲を訂正した。

【請求項1】

pHが4.5未満であり,かつ

7℃における粘度が5.4~9.0mPa・sであり,

ペクチン及び大豆多糖類を含み,

前記ペクチンの添加量が,ペクチン及び大豆多糖類の添加量総量100質量%に対して,

20~60質量%である,

豆乳発酵飲料

(但し,ペクチン及び大豆多糖類が,ペクチンと大豆多糖類とが架橋したものである豆乳発酵飲料を除く。)。

(【請求項2】以下、省略)

以下、請求項1に絞って、説明していく。

無効審判では、請求項1記載の発明(本件発明1)と特開平5-7458号公報に記載の発明(甲1発明)との対比から、両発明は、ペクチン及び大豆多糖類を含む、食品(但し、ペクチン及び大豆多糖類が、ペクチンと大豆多糖類とが架橋したものである食品を除く。)の点で共通するが、以下の4つの点で相違するとされた。

<相違点1-1>

pHについて、本件発明1では、4.5未満であるのに対して、甲1発明では、2.5~5.0である点。

<相違点1-2>

本件発明1では、7℃における粘度が5.4~9.0mPa・sであるのに対して、甲1発明では、粘度が不明である点。

<相違点1-3>

本件発明1は、ペクチンの添加量が、ペクチン及び大豆多糖類の添加量総量100質量%に対して、20~60質量%であるのに対して、甲1発明は、ペクチンと大豆多糖類との比率が不明である点。

<相違点1-4>

食品について、本件発明1は、豆乳発酵飲料であるのに対して、甲1発明は、酸性蛋白食品である点。

しかし、無効審判では、いずれも甲1発明や他の先行技術資料の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定に違反しているなどの理由で無効と結論された。

裁判において、サッポロホールディングス株式会社は、以下の主張をした。

本件各発明の本質は,豆乳発酵飲料について,pHが4.5未満であり,ペクチンの添加量の割合がペクチン及び大豆多糖類の添加量総量100質量%に対して20~60質量%の範囲にあり,かつ,粘度が5.4~9.0mPa・sの範囲にあるという構成を採用する場合に,

タンパク質成分等の凝集の抑制と共に,酸味が抑制され,後に残る酸味が少なく後味が優れるという効果が得られるところにあるから,

相違点1-1~1-4に相当する構成は互いに技術的に関連しており,これらを1つの相違点1-Aとして認定すべきであるなどと主張」した。

すなわち、1-1~1-4は、個別に判断するのではなく、全体として判断すべきと主張した。

この主張に対して、

「本件明細書によれば,本件各発明は,タンパク質成分等の凝集を抑制するという効果を奏する点では共通するものの,これらの記載に照らすと,酸味が抑制され,後に残る酸味が少なく後味が優れるという効果は,本件各発明に共通する効果とは必ずしも位置付けられていないものということができる」ことなどから、

本件各発明の効果に関しては,本件明細書の内部において不整合があるといわざるを得ず」、サッポロホールディング株式会社の「上記主張はその前提自体に疑問がある。」と裁判官は判断した。

さらに、

本件明細書からは,本件各発明につき,相違点1-1~1-4に係る構成を組み合わせ,一体のものとして採用したことで,タンパク質成分等の凝集の抑制と共に,酸味が抑制され,後に残る酸味が少なく後味が優れるという効果を奏するものと把握することはできない。」として、サッポロホールディング株式会社の主張を斥けた。

また、上記各相違点や発明の効果についての個別の検討もなされ、以下のような判断が示された。

「引用発明1-1及び引用例1記載のその他の事項に基づき,当業者は相違点1-1~1-4に係る本件発明1の構成を容易に想到し得たものであり,また,本件発明1の効果も,当業者が容易に想到し得る範囲内にとどまり,格別なものとは認められない。

この点に関する本件審決の判断に誤りはなく,取消事由1-1は理由がない。