(48)特許を巡る争いの事例;豆乳発酵飲料特許

サッポロビール株式会社の特許第5622879号「豆乳発酵飲料及びその製造方法」は、

ペクチン及び大豆多糖類を含有するなどを技術的特徴とする特許。

キッコーマンが無効審判請求し、サッポロビールは請求範囲の訂正をして対抗したが、

「進歩性」が欠如しているという理由で、無効となった。

しかし、その後、知財高裁に出訴され、争いが続いている。

サッポロビール株式会社の特許第5622879号「豆乳発酵飲料及びその製造方法」を

取り上げる。

特許第5622879号の特許請求の範囲は、以下のようである

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_5622879/1A8581EE55BEE3ED0239595BA8DDA4AE)。

【請求項1】

pHが4.5未満であり、

かつ

7℃における粘度が5.4~9.0mPa・sであり、

ペクチン及び大豆多糖類を含む、豆乳発酵飲料

(但し、ペクチン及び大豆多糖類が、

ペクチンと大豆多糖類とが架橋したものである豆乳発酵飲料を除く。)。

(請求項2以下、省略)

目的は、タンパク質成分等の凝集が抑制された豆乳発酵飲料の提供と

記載されている。

本特許は、平成25年3月5日に出願され、

公開公報の公開日平成26年9月18日より前の

平成26年5月14日に早期審査請求された。

審査の結果、平成26年9月9日に特許査定となり、

平成26年11月12日に特許公報が発行された。

公開公報の特許請求の範囲は以下のようであった。

(特開2014-168441

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H26168441/999C4326F72EAF195060F688818AC056)。

【請求項1】

pHが4.5未満であり、

かつ

7℃における粘度が5.4~9.0mPa・sである、

豆乳発酵飲料。

(請求項2以下、省略)

豆乳発酵飲料として、

「ペクチン及び大豆多糖類を含む」豆乳発酵飲料に限定

補正したことで特許査定されている。

特許公報発行日から2年あまり経過した平成29年1月31日に、

キッコーマン株式会社が無効審判請求した

(審決速報 無効2017-800013)。

無効審判の結論は、以下のようであった。

「特許第5622879号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された

訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。

特許第5622879号の請求項1ないし9に係る発明についての特許を無効とする。

請求項10についての本件審判の請求を却下する。

審判費用は、被請求人の負担とする。」

訂正された請求項1は、以下のようである。

【請求項1】

pHが4.5未満であり、

かつ

7℃における粘度が5.4~9.0mPa・sであり、

ペクチン及び大豆多糖類を含み、

前記ペクチンの添加量が、

ペクチン及び大豆多糖類の添加量総量100質量%に対して、20~60質量%である、

豆乳発酵飲料

(但し、ペクチン及び大豆多糖類が、ペクチンと大豆多糖類とが架橋したものである豆乳発酵飲料を除く。)。

(請求項2以下、省略)。

訂正前は「ペクチン及び大豆多糖類を含む」豆乳発酵飲料であったのに対し、

訂正後は、

「ペクチン及び大豆多糖類を含み、

前記ペクチンの添加量が、

ペクチン及び大豆多糖類の添加量総量100質量%に対して、20~60質量%である、」

豆乳発酵飲料となり、ペクチンと大豆多糖類の添加量の限定が追加された。

審理では、キッコーマン(審判請求人)の主張する無効理由、

新規性、進歩性、サポート要件および不明瞭記載が争点となった。

特許庁は、

「本件発明1~9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、16号証記載の事項に

基いて、・・・(中略)・・・当業者が容易に発明をすることができたものである。
・・・(中略)・・・。
したがって、本件請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して

されたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。」

として、進歩性が欠如しているとして、無効と判断した。

上記甲第1号証は、特開平5-7458号公報

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H05007458/A3A243D20A0F0080DB677F831D5C00C4)であり、

ペクチン及び大豆多糖類を含む、酸性蛋白飲料などの食品に関する発明が記載されている。

三栄源エフ・エフ・アイと不二製油が特許権(特許第2834345号)は保有していたが、

存続期間満了によって、権利消滅している(消滅日平23.7.2)。

なお、上記審決に対して、その後(平成30年6月5日)に、知財高裁に出訴し(平30行ケ10076)、引き続き争われている。

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(参考文献)

サポート要件 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tukujitu_kijun/02_0202.pdf 

実施可能要件 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shinsa/pdf/kisaiyouken_honbun.pdf

明確性要件 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/iken/pdf/kaitei_mokuji_150708/02-02-03.pdf

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