特許を巡る争い<87>味の素・ソース食感改善方法特許

味の素株式会社の特許第6981039号は、塩基性アミノ酸を配合することによって、ソースの食感を改善させる方法に関する。記載不備及び新規性・進歩性欠如の理由で異議申立てされ、新規性・進歩性欠如の取消理由が通知されたが、味の素は応答しなかったため、取り消された。

味の素株式会社の特許第6981039号”ソース及びそれを含む食品の製造方法”を取り上げる。

特許公報に記載された特許第6981039号の特許請求の範囲は、以下であるhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-6981039/FFCCC9F7036ED54EFAFB0D9E6EF13FC2F6AA813112BCA4BC1EA786BFB7E8D27A/15/ja)。
【請求項1】
ソースの製造方法であって、
塩基性アミノ酸を0.05~1.5重量%配合することを含み、
前記ソースが、油分およびタンパク質を含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であり、
ただし、以下の(1)~(4)の場合は除く、方法:
(1)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであり、且つ、前記ソースがベシャメルソースである場合であって、前記方法がさらにアラニンを配合することを含み、且つアルギニンの配合量:アラニンの配合量が重量比で1:1である場合;
(2)前記塩基性アミノ酸がL-リジンであり、且つ、前記ソースがアルフレッドソースである場合であって、前記方法がさらにL-グルタミン酸を配合することを含む場合;
(3)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがカレーである場合;(4)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがミートソースである場合。
【請求項2】~【請求項9】省略

本特許明細書には、本特許発明について、“油分および/またはタンパク質を含有するソースに塩基性アミノ酸を配合することにより”、“塩基性アミノ酸を配合しない場合と比較して、ソースの食感を改善する(向上させる)ことができる、すなわち、ソースの食感を改善する効果”(食感改善効果)が得られると記載されている。
また、食感改善効果について、“食感としては、滑らかさやボテつきが挙げられる。滑らかさとしては、ソース中の固形分の粒子が細かく舌の上でザラつきを感じにくい食感が挙げられる。ボテつきとしては、ソースが舌の上又は口の中に半固形状に残る食感が挙げられる”と記載されている。
本特許発明における塩基性アミノ酸について、“アルギニン、リジン、及びヒスチジンが、好ましくはアルギニン及びヒスチジンが、より好ましくはアルギニンが挙げられる。塩基性アミノ酸としては、1種の塩基性アミノ酸を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩基性アミノ酸を組み合わせて用いてもよい。塩基性アミノ酸が複数種の組み合わせである場合は、上述したアミノ酸の配合量(含有量)は、複数種の塩基性アミノ酸の合計量である”と記載されている。

公開公報に記載された特許請求の範囲は、以下である(特開2017-209105 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2017-209105/FFCCC9F7036ED54EFAFB0D9E6EF13FC2F6AA813112BCA4BC1EA786BFB7E8D27A/11/ja)。
【請求項1】
ソースの製造方法であって、
塩基性アミノ酸を配合することを含み、
前記ソースが、油分および/またはタンパク質を含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質である、方法。
【請求項2】~【請求項10】

特許公報に記載された請求項1と比較すると、 請求項1については、塩基性アミノ酸の配合量の数値限定、並びに(1)~(4)の場合は除く、除くクレームの形式に補正することによって、特許査定を受けている。

特許公報の発行日(2021年12月15日)の半年後(2022年6月15日)、一個人名で異議申立てがされた(異議2022-700525
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2017-097808/FFCCC9F7036ED54EFAFB0D9E6EF13FC2F6AA813112BCA4BC1EA786BFB7E8D27A/10/ja)。

審理の結論は、以下のようであった。
特許第6981039号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。

異議申立人が提出した特許異議申立書に記載された申立理由は、以下の9項目であった。

申立理由1(明確性要件)
本件特許の請求項1及び3ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである“。
申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである“。
申立理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである“。

申立理由4(甲第1号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、新規性及び進歩性が欠如している。
甲第1号証:特許第5869838号公報【発明の名称】加工卵黄含有液の製造方法、加工卵黄含有液の冷凍品、食品の製造方法およびおにぎりの製造方法
申立理由5(甲第2号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、新規性及び進歩性が欠如している。
甲第2号証:特開2013-208057号公報【発明の名称】塩味増強組成物
申立理由6(甲第3号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、新規性及び進歩性が欠如している。
甲第3号証:特許第4445691号公報【発明の名称】食塩味増強方法、食塩味増強剤、食塩味調味料および食塩味増強食品
申立理由7(甲第4号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、新規性及び進歩性が欠如している。
甲第4号証:特開2008-73007号公報【発明の名称】酢かど抑制方法
申立理由8(甲第5号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4及び6ないし9に係る発明は、新規性及び進歩性が欠如している。

甲第5号証:クックパッド「バター醤油の作り方」、https://cookpad.com/recipe/802445、2009年5月8日(レシピ公開日・更新日)、クックパッド株式会社(レシピ公開者:向島のかどや)
申立理由9(甲第6号証を主引用例とする新規性・進歩性)”
本件特許の請求項1ないし4及び6ないし9に係る発明は、新規性及び進歩性が欠如している。

甲第6号証:クックパッド「レンジで簡単★ガーリックバター醤油ソース」、https://cookpad.com/recipe/4085752、2016年9月23日(レシピ公開日・更新日)、クックパッド株式会社(レシピ公開者:Ga+)

異議申立てに対して、取消理由(起案日2022年9月30日)が通知された。

取消理由は以下の6点で、いずれも新規性欠如及び進歩性欠如を理由とし、異議申立人の提出した証拠が採用されたものであった。

取消理由1(甲第1号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4及び6ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであ“る。

取消理由2(甲第2号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであ“る。

取消理由3(甲第3号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであ“る。

取消理由4(甲第4号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであ“る。

取消理由5(甲第5号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6及び9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであ“る。

取消理由6(甲第6号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6及び9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであ“る。

以下、本特許請求項1に係る発明(本件特許発明1)に絞って、審査結果を紹介する。

取消理由通知書に記載された本件特許発明1に関する取消理由は、具体的には以下のようなものであった。

(1)取消理由1
審判官は、甲第1号証に記載された発明(甲1製造方法発明)は、甲12(省略)に記載された事項をもとに計算すると、“塩基性アミノ酸の割合は「0.08~0.24質量%」と算定され、この数値範囲は本件特許発明1における「塩基性アミノ酸」の割合の「0.05~1.5重量%」に包含される”と判断した。
そして、本件特許発明1と甲1製造方法発明とを対比して、
“甲1製造方法発明における「加工卵黄含有液」は本件特許発明1における「ソース」に相当する。したがって、両者の間に相違点はない。よって、本件特許発明1は甲1製造方法発明である。
また、本件特許発明1は甲1製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。“と結論した。

(2)取消理由2
審判官は、本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明(甲2製造方法発明)とを対比して、以下の一致点及び相違点を認めた。
<一致点>:「ソースの製造方法であって、
塩基性アミノ酸を0.05~1.5重量%配合することを含み、
ただし、以下の(1)~(4)の場合は除く、方法:
(1)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであり、且つ、前記ソースがベシャメルソースである場合であって、前記方法がさらにアラニンを配合することを含み、且つアルギニンの配合量:アラニンの配合量が重量比で1:1である場合;
(2)前記塩基性アミノ酸がL-リジンであり、且つ、前記ソースがアルフレッドソースである場合であって、前記方法がさらにL-グルタミン酸を配合することを含む場合;
(3)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがカレーである場合;
(4)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがミートソースである場合。」“
<相違点2-1>:”本件特許発明1においては「前記ソースが、油分およびタンパク質を含有し、前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であり」と特定されているのに対し、甲2製造方法発明においてはそのようには特定されていない点”。

本件特許発明の請求項2及び請求項3は、以下である。

【請求項3】前記ソースが、前記タンパク質を0.1~20重量%含有する、請求項1また
は2に記載の方法。
【請求項4】前記ソースが、前記油分を1~60重量%含有する、請求項1~3のいずれか
一項に記載の方法。

審判官は、相違点2-1について、以下のように判断した。
・“甲2製造方法発明における「パスタソース」のうち、代表的な「カルボナーラソース」に関して言えば”、甲17(省略)及び甲13(七訂 食品成分表2016、2016年4月1日、女子栄養大学出版部)に記載された事項を基に計算すると、”油分及びタンパク質濃度はおおむね”13.35%及び4.422%となる。

また、甲2製造方法発明における「ソース」は”、甲13の記載によると、一般的には、”油分及びタンパク質濃度はおおむね“3~28.3%及び1.8~6.5%である。

・“そうすると、甲2製造方法発明における「パスタソース、醤油、ドレッシング、ソース、マヨネーズ又はトマトケチャップ」のうち、「パスタソース」及び「ソース」は、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているといえ、相違点2-1は実質的な相違点ではない。
そして、“本件特許発明1は甲2製造方法発明である。また、本件特許発明1は甲2製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。”と結論した。

(3)取消理由3
審判官は、本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明(甲3製造方法発明)とを対比して、以下の一致点及び相違点を認めた。
<一致点>:「ソースの製造方法であって、
塩基性アミノ酸を0.05~1.5重量%配合することを含み、
ただし、以下の(1)~(4)の場合は除く、方法:
(1)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであり、且つ、前記ソースがベシャメルソースである場合であって、前記方法がさらにアラニンを配合することを含み、且つアルギニンの配合量:アラニンの配合量が重量比で1:1である場合;
(2)前記塩基性アミノ酸がL-リジンであり、且つ、前記ソースがアルフレッドソースである場合であって、前記方法がさらにL-グルタミン酸を配合することを含む場合;
(3)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがカレーである場合;
(4)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがミートソースである場合。」
<相違点3-1>:“「本件特許発明1においては「前記ソースが、油分およびタンパク質を含有し、前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であり」と特定されているのに対し、甲3製造方法発明においてはそのようには特定されていない点。“

審判官は、相違点3-1について、以下のように判断した。
・“相違点3-1は相違点2-1と実質的に同じであるから”、相違点2-1と同様に判断され、“相違点3-1は実質的な相違点ではない。”
そして、
“本件特許発明1は甲3製造方法発明である。また、本件特許発明1は甲3製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである”と結論した。

(4)取消理由4
審判官は、本件特許発明1と甲第4号証に記載された発明(甲4製造方法発明)とを対比して、以下の一致点及び相違点を認めた。
<一致点>:“「ソースの製造方法であって、
塩基性アミノ酸を0.05~1.5重量%配合することを含み、
ただし、以下の(1)~(4)の場合は除く、方法:
(1)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであり、且つ、前記ソースがベシャメルソースである場合であって、前記方法がさらにアラニンを配合することを含み、且つアルギニンの配合量:アラニンの配合量が重量比で1:1である場合;
(2)前記塩基性アミノ酸がL-リジンであり、且つ、前記ソースがアルフレッドソースである場合であって、前記方法がさらにL-グルタミン酸を配合することを含む場合;
(3)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがカレーである場合;
(4)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがミートソースである場合。」“
<相違点4-1>:“本件特許発明1においては「前記ソースが、油分およびタンパク質を含有し、前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タ
ンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であり」と特定されて
いるのに対し、甲4製造方法発明においてはそのようには特定されていない点。“

審判官は、相違点4-1について、以下のように判断した。
・“相違点4-1は実質的に相違点2-1の「ソース」の場合と同じであるから”、相違点2-1と同様に判断され、“相違点4-1は実質的な相違点ではない。”
そして、
“本件特許発明1は甲4製造方法発明である。また、本件特許発明1は甲4製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである”と結論した。

(5)取消理由5
審判官は、甲第5号証に記載された発明(甲5製造方法発明)について、甲20(省略)に記載された事項を基に、甲5製造方法発明における「醤油」及び「バター」の配合、質量及び質量比を算出し、
甲12(省略)及び甲21(省略)の記載された事項を基に、“甲5製造方法発明における「バター醤油」に含まれる塩基性アミノ酸(リジン、ヒスチジン、アルギニン)の含有量(質量%)を算出すると”、
“甲5製造方法発明における「バター醤油」に含まれる塩基性アミノ酸は、リジン:0.14質量%、ヒスチジン:0.04質量%、アルギニン:0.12質量%、合計:0.30質量%と算出され、この数値は本件特許発明1における「塩基性アミノ酸」の割合の「0.05~1.5重量%」に包含される”と判断した。
さらに、
“甲5製造方法発明における「バター醤油」は本件特許発明1における「ソース」に相当する。甲5製造方法発明における「バター醤油」の材料である「バター」が「油分」及び「乳由来タンパク質」を含有することは当業者に明らかである。したがって、両者の間に相違点はない“と判断した。

以上から、審判官は、“本件特許発明1は甲5製造方法発明である。また、本件特許発明1は甲5製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである”と結論した。

(6)取消理由6
審判官は、甲第6号証に記載された発明(甲6製造方法発明)について、甲20(省略)に記載された事項を基に、“甲6製造方法発明における材料の配合、質量及び質量比を算出し”、
甲12(省略)、甲14(省略)及び甲21(省略)に記載された事項を基に、“甲6製造方法発明における「ガーリックバター醤油ソース」に含まれる塩基性アミノ酸(リジン、ヒスチジン、アルギニン)の含有量(質量%)を算出すると”、
“甲6製造方法発明における「ガーリックバター醤油ソース」に含まれる塩基性アミノ酸は、リジン:0.18質量%、ヒスチジン:0.05質量%、アルギニン:0.15質量%、合計:0.38質量%と算出され、この数値は本件特許発明1における「塩基性アミノ酸」の割合の「0.05~1.5重量%」に包含される”と判断した。
さらに、“甲6製造方法発明における「ガーリックバター醤油ソース」は本件特許発明1
における「ソース」に相当する。
甲6製造方法発明における「ガーリックバター醤油ソース」の材料である「バター」が「油分」及び「乳由来タンパク質」を含有することは当業者に明らかである。したがって、両者の間に相違点はない“と判断した。

以上から、審判官は、“本件特許発明1は甲6製造方法発明である。また、本件特許発明1は甲6製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである”と結論した。

取消理由通知に対して、味の素株式会社は応答しなかった。

その結果、審判官は、“令和 4年 9月30日付けで取消理由及び審尋を通知し、期間を指定して意見書及び回答書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである“と結論した。