特許を巡る争い<6>サントリー・容器詰飲料特許

サントリーホールディングス株式会社の特許第6274725号は、Na、K、Ca、Mgなどが配合されていながら、呈味が改善された飲料に関する。一個人から異議申立てされたが、サントリーは請求項をすべて削除する訂正を行ったため、対象とする請求項がなくなり、申立ては却下された。

サントリーホールディングス株式会社の特許第6274725号「飲料組成物」を取り上げる。

特許第6274725号の特許請求の範囲は、以下の通りである

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_6274725/889951BF2701F7ECEDB6DC1B08FF2E8E)。

【請求項1】

Ca2+濃度が2mg/100ml未満、

Mg2+濃度が2mg/100ml未満、

Na+濃度が20~80mg/100ml、

浸透圧が100~400mOsm/kg、

Na+:ぶどう糖のモル比が1:0.1~10、

Na+:K+のモル比が1:0.05~1である、

人工甘味料を含有しない、

殺菌済の容器詰飲料組成物の製造方法であって、

 以下の成分:

(1)0.01~30%の果汁;

(2)0.01~10%の天然甘味料;

(3)0.005~0.2%の食塩;

(4)0.005~1%の下記からなる群より選択される天然旨味・コク味源:

藻類エキス、節類エキス、きのこ類エキス、穀類エキス、野菜エキス、果実エキス、ハーブエキス、葉肉エキス、豆類エキス、種実類エキス、酵母エキス、樹液類、サトウキビ搾汁液(黒糖蜜)及び砂糖;

を配合する工程を含む、上記方法。

(【請求項2】以下は省略)。

本発明を用いることによって、「K+、Ca2+、Mg2+、Cl-などの電解質に由来するぬめりや苦味、口腔粘膜の刺激感、クセのある後味が改善されたスムーズな水分補給等を目的にした飲料を提供する」ことができると書かれている。

公開時の特許請求の範囲は以下の通りである(特開2013-99341、

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H25099341/295D8EAEC292A5C7B3A17F1DBE37FC12)。

【請求項1】

Na+濃度20~80mg/100ml、

浸透圧が100~400mOsm/kg、

Na+:ぶどう糖(モル比)1:0.1~10、及び

Na+:K+(モル比)1:0.05~1であり、

実質的に緩衝作用を示さない指定添加物の電解質が添加されていない飲料組成物。

(【請求項2】以下、省略)

上記公開公報の請求項1に、Ca2+濃度、Mg2+濃度、人工甘味料含有、果汁などの特定の成分の配合、および容器詰の限定がなされ、特許査定されている。

本特許は、拒絶理由通知が3回発送されているが、審査請求前に2回情報提供(刊行物等提出)、審査中にも2回情報提供(刊行物等提出)を受けている。

特許公報発行日の半年後(2018年8月6日)に、個人名で異議申立された(異議2018-700651)。

審理の結論は以下の通りである。

特許第6274725号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。

 本件特許異議の申立てを却下する。

サントリーは、異議申立の審理において、特許請求の範囲の請求項1~4を削除する訂正を行った。本特許の特許請求の範囲は、請求項1~4から構成されており、全請求項を削除したことになる。

その結果、「本件特許の請求項1~4(全請求項)は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1~4に対して、特許異議申立人●●●●がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなった。

したがって、本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。」との結論になった。

なお、本特許には分割出願されていたが(出願2016-178438 、特開2017-35089、https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H29035089/C034C1D601A046A6E3E74138A8B489F4)、審査請求後、情報提供(刊行物等提出書)され、最終的に拒絶査定となっている。