【17】新規性欠如の考え方;上位概念と下位概念

新規性に関する無効資料調査をする際に注意すべきことは、資料の公開日(閲覧可能日)とともに、上位概念と下位概念の考え方の理解である。

上位概念で表現された発明は引用発明として認定可能だが、下位概念で表現された発明は認定されない。上位概念と下位概念は、「物」の特許だけでなく、「機能、特性等によって物を特定しようとする記載を含む請求項」の場合も同様に適用される。

無効資料調査でまず留意すべきこととして、引用発明として認定されるかどうかでまず問題となるが、”(16)「先行」技術とは? ~資料の公開日の証明~”(http://patent.mfworks.info/2019/02/04/post-1706/)では、特許資料が当該特許の出願日より前に公開された(閲覧可能な)資料に該当するかどうかという観点から説明した。

審査基準では、引用発明として認定されると、対比し、「相違点がなければ、審査官は、請求項に係る発明が新規性を有していないと判断し(第1節)、相違点がある場合には、進歩性の判断を行う(第2節)」(http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tukujitu_kijun/03_0203.pdf)。

なお、新規性の判断については、以前に説明している。

(25)特許性とはなにか? ~新規性、進歩性、産業上の利用可能性~

http://patent.mfworks.info/2018/02/19/post-525/

(26)特許権の不安定さを生む要因 その1;新規性判断

http://patent.mfworks.info/2018/02/26/post-534/

無効資料調査において、資料の公開日(閲覧可能日)とともに、新規性を判断する際に注意すべきことは、「上位概念」と「下位概念」の考え方を理解しておくことである。

「先行技術を示す証拠が上位概念又は下位概念で発明を表現している場合の取扱い」について、以下のように説明されている(http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tukujitu_kijun/03_0203.pdf

http://www.inpit.go.jp/content/100798509.pdf

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tokkyo_shinsakijyun_point/01.pdf)。

“発明を特定するための事項として

「同族的若しくは同類的事項、又は、ある共通する性質」を用いた発明を刊行物等が既に示しているならば、

→上位概念で表現された発明を引用発明として認定可能

下位概念で表現された発明が示されていることにならない。

→下位概念で表現された発明は認定できない

※技術常識を参酌することにより、下位概念で表現された発明が導き出せる場合は認定可能“

なお、審査基準には、「上位概念」の説明として、上記したように、「同族的若しくは同類的事項を集めて総括した概念又はある共通する性質に基づいて複数の事項を総括した概念をいう。」と書かれている。

「調査業務実施者育成研修テキスト」(http://www.inpit.go.jp/content/100798509.pdf)には、

「熱可塑樹脂」と「ポリエチレン、ポリプロピレン」、および「金属コップ」と「鉄のコップ」の事例が示されているが、ここでは、「酒類」を例に説明する。

「酒類」は、酒税法では「アルコール分1度以上の飲料」と定義されている。

そして、「酒類」は、「発泡性酒類」(ビールなど)、「醸造酒類」(清酒など)、「蒸留酒類」(焼酎、ウイスキーなど)、「混成酒類」(リキュールなど)に分類されている(https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2018/pdf/006.pdf)。

「上位概念」は、「同族的若しくは同類的事項を集めて総括した概念又はある共通する性質に基づいて複数の事項を総括した概念」であるので、「酒類」は、「発泡性酒類」、「醸造酒類」、「蒸留酒類」、「混成酒類」の上位概念にあたる。

一方、「発泡性酒類」、「醸造酒類」、「蒸留酒類」、「混成酒類」は、「酒類」の下位概念になる。

また、「ビール」、「清酒」、「焼酎」、「ウイスキー」、「リキュール」も、「酒類」の下位概念になる。

無効化したい発明が「酒類」に関するものであれば、たとえば、「発泡酒類」や「ビール」に関する先行発明が見つかれば、引用発明として認定され得る。

一方、無効化したい発明が「ビール」に関するものであれば、たとえば、「酒類」や「発泡酒類」に関する先行発明は、引用発明として認定されない可能性が高いということになる。

「可能性」としたのは、「上位概念」であっても、「技術常識を参酌することにより、下位概念で表現された発明が導き出される場合には(注2)、審査官は、下位概念で表現された発明を引用発明として認定することができる」ためである。

「酒類」で説明したが、「酒類」という概念を、酒税法とは別の概念で定義している場合もあるので、明細書の記載や出願時の技術常識の調査をもとに、その意味するところをきちんと理解することが重要である。

なお、上位概念と下位概念については、「物」の特許だけでなく、「機能、特性等によって物を特定しようとする記載を含む請求項」の場合も同様に考える。