(54)特許を巡る争いの事例;サントリー炭酸飲料特許

サントリーの特許第6109437号は、天然甘味料成分レバウディオサイド(Reb)の含有比を調節することによって、コーラ等の炭酸飲料の泡⽴ちを抑制する⽅法に関する特許。異議申立されたが、比較対照飲料のReb含量を明記し、Reb含量の数値範囲を変更することによって、取消されず、権利維持された。

サントリー食品インターナショナルの特許第6109437号「炭酸飲料、炭酸飲料の調製に⽤いられるシロップ、炭酸飲料の製造⽅法、及び炭酸飲料の泡⽴ちを抑制する⽅法」を取り上げる。

特許第6109437号の特許請求の範囲は、以下のようである。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_6109437/44FA4649A0F4E4618577B6F22FC33553)。

【請求項1】

泡立ちが抑制された容器詰炭酸飲料であって、

RebAの含量が250ppm以下、

RebMの含量が486ppm以下、

(RebM/RebA)が質量比で2.5以上、

RebA及びRebMの合計含量が、ショ糖換算のBrixで0.5~11.5、

カフェインの含量が1~200ppm、及び

炭酸ガスのガス圧が2.15kgf/cm2以上

である、前記容器詰炭酸飲料。

(【請求項2】以下、省略)

「Reb」は、レバウディオサイド(Rebaudioside)の略で、天然甘味料ステビア抽出物に含まれる甘味成分として知られており、Rebとしては、RebA、RebB、RebC、RebD、RebEなどが知られている。

RebM(レバウディオサイドM)も、ステビアに含まれる新規甘味成分として発見されたが、守田化学工業が「レバウディオサイドM」の物質特許を保有している。

(ステビアについて http://www.morita-kagaku-kogyo.co.jp/main/html/stevia/

~ロケットの町 東大阪から世界へ打上~ 次世代のステビア「レバウディオサイドM」の特許取得! 2020年をメドに商品化予定。 https://www.value-press.com/pressrelease/205367)。

「炭酸飲料」として、スパークリング飲料、コーラ、ダイエットコーラ、ジンジャーエール、サイダー、及び果汁風味が付与された炭酸水が例示されている。

天然甘味料としてステビア抽出物を含有する炭酸飲料では、泡立ちや、容器からの噴きこぼれ、開栓後のコップ等の別の容器に注いだ場合の泡立ちや噴きこぼれるという技術課題があった。

泡立ちの原因を究明したところ、RebAが関与していることを見つけ、ステビア抽出物のRebAの含量を低くし、RebAをReDやRebMに置き換えることにより、炭酸飲料の泡立ちの問題に対処しながら、ステビア抽出物に由来する甘味を十分に与えることを可能としたという内容である。

本特許は、もともとは国際出願されており(国際公開番号WO2016/052659)、国際公開の約半年後に日本で早期審査請求された。

公開時の特許請求の範囲は、以下の通りで、Rebの含量や質量比、カフェイン含量、炭酸ガス圧の数値限定と、炭酸飲料として、「容器詰」であり、「泡立ちが抑制された」飲料の限定もなされて、特許査定された(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA1WO16052659/C2B255D72B1C5B1A807B6BD62D5262A3)。

【請求項1】

RebAの含量が500ppm以下、

RebD及び/又はRebMの含量が486ppm以下、

((RebD及び/又はRebM)/RebA)が、質量比で0.45以上、

RebA、並びに、RebD及び/又はRebMの合計含量が、ショ糖換算のBrixで0.5~13.5

である、炭酸飲料。

(【請求項2】以下、省略)

登録公報発行日(平成29年4月5日)の半年後(平成29年10⽉5⽇)に、一個人から

サントリーホールディングス(サントリー食品インターナショナルから権利移転)

に対して異議申立がなされた(異議2017-700959)。

結論は以下のようなものであった。

特許第6109437号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、〔3-4〕、〔5-6〕について訂正することを認める。特許第6109437号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

訂正された請求項1は、以下のようで、「泡立ち」が「RebとしてRebAを単独で含有する炭酸飲料に⽐べて」抑制されていると比較対照を明記し、RebAとRebMの合計含量の数値範囲を変更している。

【請求項1】

RebとしてRebAを単独で含有する炭酸飲料に⽐べて泡⽴ちが抑制された容器詰炭酸飲料であって、

RebAの含量が250ppm以下、

RebMの含量が486ppm以下、

(RebM/RebA)が質量⽐で2.5以上、

RebA及びRebMの合計含量が、ショ糖換算のBrixで1.0〜11.5

カフェインの含量が1〜200ppm、及び

炭酸ガスのガス圧が2.15kgf/cm 以上

である、前記容器詰炭酸飲料。

(【請求項2】以下、省略)

審理では、進歩性、実施可能要件、サポート要件及び明確性要件について争われた。

進歩性については、特表2015-502404号公報等との対比をもとに、当業者が容易に想到し得たものではなく、周知技術であることの証拠も⾒出せないとして、進歩性を認めた。

実施可能要件や明確性要件については、主に、「泡⽴ち抑制」と「炭酸ガスのガス圧2.15kgf/cm 以上が下限値のみの規定になっていることについて検討され、違反があるものとは言えないと判断された。

また、サポート要件については、RebAとRebMの含量や質量比等が検討されたが、違反があるものとは言えないと判断され、取り消されなかった。

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(参考文献)

サポート要件 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tukujitu_kijun/02_0202.pdf

実施可能要件

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shinsa/pdf/kisaiyouken_honbun.pdf

明確性要件

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/iken/pdf/kaitei_mokuji_150708/02-02-03.pdf

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