(5)「特許」で何が得られるか ~特許権の価値~

「特許権」を取得すると、特許で認められた発明を独占的に実施できるようになる。万一、他社が特許侵害していた場合には、その差止請求と被った損害の賠償請求をすることができる。また、「特許権」は、売買や特許料などの収入をもたらす「無体財産権」であり、資産の一つである。

特許権は、特許庁の審査によって特許として認められた上で(特許査定)、特許料を支払い、特許庁に設定登録されて権利行使できるようになる。特許法第68条には、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」と規定されており、特許権者は当該発明を独占的に実施することができる。

万一、他社が当該発明を実施していた場合には、特許権の侵害になり、その場合には、現在・将来の侵害行為及び過去の侵害行為に対する救済措置を求めることができる。

現在・将来の侵害行為に対して、特許法第100条には、「差止請求権」が認められており、侵害の停止・予防、侵害物の廃棄や侵害行為供用設備等の除却を求めることができる。また、過去の侵害行為に対しては、「損害賠償請求権」(民法第709条、侵害者の故意・過失を要件)と「不当利得返還請求権」(民法第703条、侵害者の故意・過失は不要)が認められている。それ以外に、「信用回復措置請求権」(特許法第106条)や特許権侵害罪(特許法196条)の規定もある。

特許権があれば、特許発明を独占排他的に実施でき、他社が同一発明を実施するのを防ぐことができ、侵害された場合には救済措置が認められているが、逆に、実施権を多くの企業に積極的に与え、業界の標準技術(標準規格)にすることによって、市場での優位性を確保していくという形での特許権の利用もなされている。

「特許権」は、特許発明を独占排他的に実施する形での権利行使以外に、「無体財産権」でもあり、会社合併などの一般承継によって移転できる「資産」である。

例えば、特許権者は特許権を売買できるし、その価値は、M&Aでの企業価値評価や特許性をもとにしたパテントスコアーという評価によって評価されている。また、その実施権をライセンスすることによって、特許料収入(ロイヤリティー収入)を得ることもできる。特許権取得している技術力を強みとして会社の信用を高めたり、融資を引き出すために活用することがなされており、企業価値を高めるツールでもある。

なお、特許権を特許発明を独占排他的に実施するための攻めの武器として利用する考えではなく、他社に特許権を取得されると自社に影響が及ぶような発明について、他社の影響を排除しようとする考え方で特許権を取得しようとすることも行われている。

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(参考文献)

知的財産の価値評価について 特許庁 2017

https://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai2/training/textbook/pdf/Valuation_of_Intellectual_Property_JP.pdf#view=fit&toolbar=1&navpanes=0

特許権の効力 http://www.suzuki-po.net/mail_maga/mail_ma16/mailma1603.html

日本の知的財産権に係る損害賠償制度の現状と今後のあり方について

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/_src/20151206/20151206tamurappt.pdf

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/_src/20151206/20151206tamura.pdf

経済産業省 特許権侵害への救済手続 http://www.meti.go.jp/policy/ipr/infringe/remedy/remedy03-1.html

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