オーストラリアの企業、バロークス プロプライアタリー リミテッド社のワイン容器詰め方法特許第3668240号は、「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」に関する特許である。
同社は、大和製罐、モンデ酒造、伊藤忠食品およびセブン-イレブン・ジャパンに対して、上記特許権侵害差止等を求めて、東京地方裁判所に提訴した。
大和製罐はアルミ缶を製造し、モンデ酒造は大和製罐から購入したアルミ缶にワインを充填して製品を製造し、伊藤忠食品はモンデ酒造から製品を購入し、セブンイレブンは伊藤忠食品から製品を購入して消費者に販売しているとしてである。
判決は、サポート要件違反および実施可能要件違反があり、無効にされるべきものであるため、原告は本件発明に係る特許権を行使することができないとして、差止請求等は棄却され、バロークス プロプライアタリー リミテッド社が敗訴した。
オーストラリアの企業、バロークス プロプライアタリー リミテッドの
特許第3668240号「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」を
取り上げる。
特許第3668240号は、もともと国際出願され(国際公開番号WO2003/029089、
国際公開日平成15年4月10日)、平成15年3月に日本への移行手続がなされ、
すぐに早期審査請求された。
特許第3668240号の特許請求の範囲は、以下のようである
(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_3668240/3C1104BEEE01352693DA5FFB4B3B028D)。
【請求項1】
アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって、該方法が:
35ppm未満の遊離SO2と、300ppm未満の塩化物と、
800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステップと;
アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされている
ツーピースアルミニウム缶の本体に、
前記ワインを充填し、
缶内の圧力が最小25psiとなるように、
缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップとを含む、
アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法。
(請求項2以下、省略)
ワインの品質が保存中に著しく劣化しないようにすることを目的とした特許である。
特許登録後、つい最近に至るまで、20件ものファイル記録事項の閲覧の請求
(縦覧請求)があった特許である。
登録後、4回の判定請求と1回の無効審判請求がなされた
(判定2011-600023、判定2011-600024、判定2015-600020、判定2015-600022、無効2016-800043)。
判定2011-600023と判定2011-600024の2件は、いずれもアサヒビール株式会社が請求している
(判定2011-600023 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH23600023/635B51C5A9B385590C2433489AD3012C
判定2011-600024 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/TA/JPJZH23600024/635B51C5A9B3855944744070832C311F)。
アサヒビールは、
2種類の「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」について、
特許第366824号の「特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に
属さない」(侵害しない)との判定を求めたものである。
判定2011-600023で判定を求めた方法は「技術的範囲に属する」、
判定2011-600024で判定を求めた方法は「技術的範囲に属さない」と結論された。
判定2015-600020と判定2015-600022の2つの判定請求は、
バロークス プロプライアタリー リミテッドが行ったもので、
判定2015-600020は、モンデ酒造株式会社に対してである。
これら2件の審判請求は取り下げられたが、
バロークス プロプライアタリー リミテッドは、
モンデ酒造株式会社、大和製罐株式会社、伊藤忠食品株式会社および
株式会社セブン-イレブン・ジャパンに対して、
特許権侵害差止等を求めて、東京地方裁判所に提訴した。
(平成27年(ワ)第21684号 特許権侵害差止等請求事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/717/087717_hanrei.pdf)。
大和製罐はアルミ缶を製造し、
モンデ酒造は大和製罐から購入したアルミ缶にワインを充填して製品を製造し、
伊藤忠食品はモンデ酒造から製品を購入し、
セブンイレブンは伊藤忠食品から製品を購入して消費者に販売しているが、
バロークス プロプライアタリー リミテッドは、
特許第3668240号の訂正請求後の特許請求の範囲請求項1の
発明の技術的範囲に属すると主張し、
また各アルミ缶は本件特許権の実施のみに用いるものである(間接侵害)と主張し、
製造販売の差止めおよび廃棄、共同不法行為に基づく損害賠償金の支払いを求めた。
この訴訟に先立って、
大和製罐は、本件特許について無効審判請求(無効2016-800043)し、
特許庁は、平成29年3月29日に請求項1~15に係る発明を全て無効とすべき旨の
審決予告をしていた。
バロークス プロプライアタリー リミテッドは、以下のように、
請求項1に下線部の文言を追加するなどの訂正を行った。
【請求項1】
アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって,該方法が:
アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして,
35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,
800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを
意図して製造するステップと;
アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされている
ツーピースアルミニウム缶の本体に,
前記ワインを充填し,
缶内の圧力が最小25psiとなるように,
前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップとを含む,
アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法
平成30年4月20日に判決が言い渡された。
サポート要件違反および実施可能要件違反があり、
無効にされるべきものであるため、
原告は本件発明に係る特許権を行使することができないとして、
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
となり、バロークス プロプライアタリー リミテッドが敗訴した。
なお、上記無効審判(無効2006-800043)は、平成30年2月20日に審決、
進歩性とサポート要件で無効理由があるとして、
「特許第3668240号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された
訂正特許請求の範囲のとおり、
訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
特許第3668240号の請求項1~8、10~15に係る発明についての
特許を無効とする。」
と結論されている。
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(参考文献)
ワイン充填方法事件 https://ameblo.jp/nsipat/entry-12374683888.html
ワインをパッケージングする方法事件
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