【1】邪魔な特許を潰すには、邪魔な特許の「早期発見」が第一の要点

邪魔になる特許を潰すためには、無効資料調査、それもそのスキルが一番大事のように思われているのではないか。

しかし、「潰す」には、まずは、「邪魔な特許」を見つけていることが前提になる。

「潰す」ための第一の要点は、実は事業の障害となりそうな特許の「早期発見」である。

特許庁から特許出願や特許査定等のさまざまな情報が公開される。

「早期発見」の意味は、可能な限り、迅速に公開情報を入手、そして、入手情報の中に、

「邪魔な特許」が含まれていないか迅速にチェックして、「邪魔な特許」となりそうな特許を

見つけることである。

「早期」であればあるほど、当然のこと、いろいろな「潰す」アクションを取れる。

たとえば、審査請求されていない時点であれば、情報提供・異議申立て・無効審判の

「潰す」アクションを状況に応じて取れるし、

時間的余裕、費用の点でもメリットがある。

また、万一、「潰す」ことが難しいと判断された場合でも、侵害回避対策を検討する

余裕がある。

しかし、審査の結果、特許査定となり、特許公報が発行され、7カ月後に発見した場合で

あれば、無効審判しか「潰す」手段は残されていないし、難易度は格段に高くなっている。

公開情報は、出願からの時系列で言えば、大多数の特許出願は、公開特許公報、出願情報

(書誌・経過情報)、特許公報の順になる。

公開特許公報は、「出願日から起算して、18月(1年6月)経過後2週間以内」、

つまり、出願日から約1年半後に、出願された情報が公開される。

特許公報は、審査の結果、特許査定になり、登録料が納付され、特許庁での設定登録後、

3~4週間程度で、特許査定となった情報が公開される。

https://www.jpo.go.jp/torikumi/kouhou/kouhou2/koho_faq.htm

公報の発行予定は公開されており、公開公報は毎週木曜日、特許公報は毎週水曜日である。(https://www.jpo.go.jp/torikumi/kouhou/kouhou2/hakko.htm)。

書誌・経過情報は、「整理標準化データ」として、データ提供予定日が公開されている

http://www.inpit.go.jp/info/standard/data/30fy.html)。

(平成31年5月からは、書誌・経過情報に関する新たなデータの提供を開始予定。

https://www.jpo.go.jp/torikumi/chouhoyu/chouhoyu2/keikajoho-kakudai.html

公開特許公報、出願情報(書誌・経過情報)、特許公報は、いずれも、独立行政法人

工業所有権・情報研修館の「特許情報プラットフォーム」(J-PlatPat)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage)で検索することができる。

検索方法は、上記ウエブサイトに説明があるし、多数の成書に詳細に紹介されている。

(たとえば、

「特許調査入門 改訂版 サーチャーが教えるJ-PlatPatガイド」

http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026604380-00

書評 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/66/7/66_367/_article/-char/ja/

なお、J-PlatPatの検索機能は随時更新されているので、注意が必要。

いち早く情報を入手するためには、国際出願された特許の情報も視野に入れたい。

国際出願特許は、WIPO(World Intellectual Property Organization、

世界知的所有権機関)に出願され、国際公開される。

国際出願された特許は、特許権を取得したい国に対して、移行手続を行って、

当該国での審査を受けられるようにする。

移行手続を行うと、当該国にて公開公報に相当する「再公表公報」が発行される

(「平成29年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト PCT 国際出願制度の概要

-特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の仕組み」

http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11218880/www.jpo.go.jp/seido/s_tokkyo/pdf/s_tokkyo/text.pdf)。

日本では「再公表特許は公報ではないため、あくまでも目安となりますが、

国際公開から約1年9月程度」(https://www.jpo.go.jp/torikumi/kouhou/kouhou2/koho_faq.htm#anchor1-2

である。

国際公開の段階での情報を入手するようにすれば、国内での情報収集だけよりも、

かなり早期に察知でき、よりさまざまな対策を打つことができる。

国際公開の情報は、WIPOの「PATENTSCOPE 国際・国内特許データベース検索」

https://patentscope.wipo.int/search/ja/search.jsf)で検索できるし、

Espacenet Patent search (https://worldwide.espacenet.com/advancedSearch?locale=jp_EP

でも検索できる。

また、日本へ国内移行手続された国際出願特許のデータは公開されており、

「再公表特許公報」よりもはやく日本に移行されたかどうかを知ることができる。

(他国特許庁との工業所有権情報の交換、その情報の活用

http://www.inpit.go.jp/info/coop/index.html

国内移行データ一覧表 http://www.inpit.go.jp/info/topic/topic00002.html)。

「邪魔な特許」を見つけるためや、その動向を把握するためには、

JPlatPatや“PATENTSCOPE”、“Espacenet Patent search”などの

公的データベースでは、定期的に検索を行う方法がある。

商用データベースには、“SDI”(Selective Dissemination of Information、

選択的情報提供)の機能があり、あらかじめキーワードなどの検索条件を検索システムに

登録しておくと、定期的に自動で検索して、メール等などで検索結果を提供してくれる

サービスがある。

また、「邪魔な特許」の動向を知るために、特定特許の経過情報を定期的に検索して、

動きがあった場合に知らせてくれる“WATCHING” (ウォッチング)の機能が

備えられている。