特許を巡る争い<104>ハウス食品・紅麹色素含有おろし生姜特許

ハウス食品の特許第7036389号は、紅麹色素などの特定の色素を用いて、生姜などの細片を含有する食品を好ましい赤色に呈色する方法に関する。異議申立てされ、2度の取消理由通知が送付されたが、訂正することによって、権利維持された。

ハウス食品の特許第7036389号“天然色素を含む食品組成物”を取り上げる。

特許公報に記載された特許第7036389号の特許請求の範囲は、以下であるhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7036389/15/ja)。

【請求項1】

水性媒体と、天然物の細片とを含み、かつ、

天然色素として下記の(i):

(i)モナスカス色素と、カロテノイド色素との組み合わせ

を含む、食品組成物(ただし、ヘム鉄と、ベニコウジ色素及び/又はアナトー色素との組み合わせを含む食品組成物、並びに、コチニール赤色素を含む食品組成物を除く)。

【請求項2】~【請求項7】省略

本特許明細書には、本特許発明の発明の背景として、“「おろししょうが」等の、“破砕した天然物(体積を有する天然物の細片)を水性媒体中に含む組成物を、赤色等の所望の色に着色する場合、水性媒体と天然物の細片の両方を着色することができ、且つ、これらの着色の、室温における色の経時変化がないこと、保存時の光安定性及び加熱調理時の熱安定性が高いことが求められる”が、本特許発明に係る食品組成物では、“水性媒体及び天然物の細片が着色され、且つ、着色の保存時の光安定性及び加熱調理時の熱安定性が高い。これらの天然色素は好ましくは赤色を呈する”と記載されている。

本特許発明における“「水性媒体」”とは、“少なくとも水を含む液状又はペースト状(粘性を有する液状)の媒体であ”ると記載されている。

また、“天然物”とは、“好ましくは食用できる植物や動物、より好ましくは植物であり、特に好ましくは野菜又は果実である。天然物の具体例としては、しょうが、大根、しょうが、わさび及びにんにくからなる群から選択される1以上が挙げられる”と記載されている。

モナスカス色素”について、“具体的には、ベニコウジ黄色素及びベニコウジ色素等から選択される1以上であり、色を呈する色素であるベニコウジ色素が好適であ”り、

カロテノイド色素は、具体的には、赤色を呈する色素である、トウガラシ色素、トマト色素、ファフィア色素及びヘマトコッカス藻色素が好適である”と記載されている。

本特許は、2020年9月16日に出願され、4か月後の2021年1月14日に早期審査請求され、2022年2月1日に特許査定を受けている。このため、公開日(2022年3月29日)より前の、2022年3月15日に特許公報が発行されている。

公開公報に記載された特許請求の範囲は、以下であるhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2022-049204/11/ja)。

【請求項1】

水性媒体と、天然物の細片とを含み、かつ、

天然色素として下記の(i)及び(ii):

(i)モナスカス色素と、カロテノイド色素及びアントシアニン色素から選択される1以上との組み合わせ、

(ii)イリドイド色素

の一方又は両方を含む、食品組成物。

【請求項2】~【請求項8】 省略

請求項1については、公開公報に記載された請求項1の天然色素の組み合わせの限定、及び除くクレームの形への補正によって、特許査定を受けている。

特許公報の発行日(2022年3月15日)の半年後(2022年9月14日)に、一個人名で異議申立てられた(異議2022-700901 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-155294/10/ja)。

審理の結論は、以下のようであった。

“特許第7036389号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。

特許第7036389号の請求項1ないし4、6及び7に係る特許を維持する。

特許第7036389号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。“

異議申立書に記載された異議申立て理由は、以下の3点であった。

(1)“申立理由1(甲第1号証ないし甲第4号証に基づく新規性)

本件特許の請求項1ないし3、及び、5ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証ないし甲第4号証のいずれかに記載された発明であ“る。

(2)“申立理由2(甲第1号証ないし甲第4号証に基づく進歩性)

本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証ないし甲第4号証のいずれかに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであ“る。

(3)“申立理由3(サポート要件)

本件特許の請求項1ないし7に係る特許”は、”特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである“。

異議申立理由の証拠として提出された甲第1号証~甲第4号証は、以下である。

甲第1号証:“お漬物ギフトセット ちいさなだいやす”,G-Callショッピング,[検索日2022年8月18日],インターネット<URL: https://www.g-call.com/shopping/pc/detail.php?gdp_no=31253>

甲第1号証の1:“こんなの欲しかった!手のひらサイズのかわいい京漬け物”,価格.COMマガジン,[検索日2022年8月18日],インターネット<URL: https://kakakumag.com/food/?id=8668>

甲第2号証:“Chunky Hot Sauce with Gochujang”,Mintel GNPD,記録番号(ID#)1600695,掲載時期2011年7月,[検索日2022年7月14日],イン

ターネット<URL: https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1600695/from_search/rKgR4IPPzU/?page=1>

甲第2号証の1:“具材たっぷりの新感覚の焼肉のたれ、エバラ[具だくさん 中辛・辛ロ・ねぎ塩]はまさに具と一緒に肉を食べている感覚”,Gigazine,[検索日2022年8月18日],インターネット<URL: https://gigazine.net/news/20120515-ebarafoods-gudakusan/>

甲第3号証:“エバラ「キムチ鍋の素」を食べてみた☆”,ぐるぐる☆ハングル,掲載時期2017年9月25日,インターネット<URL: https://ameblo.jp/nao-nao-0804/entry-12313746542.html>

甲第3号証の1:“Kimuchi Hot Pot Soup Sauce”,Mintel GNPD,記録番号(ID#)5339673,掲載時期2017年12月,[検索日2022年7月14日],イ

ンターネット<URL: https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/5339673/from_search/tBZp9BlfCu/?page=1>

甲第4号証:“簡単なのに 見栄え豪華で美味しい オーマイ パエリアの素”,クビの蒼い風,掲載時期2015年7月16日,[検索日2022年8月18日],インターネット<URL: http://blog.livedoor.jp/kupikupikupi11/archives/65833625.html>

甲第4号証の1:“Paella Sauce”,Mintel GNPD,記録番号(ID#)l770293,掲載時期2012年4月,[検索日2022年7月14日],インターネット<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1770293/from_search/rKgR4IPPzU/?page=8>

以下、本特許請求項1に係る発明(本件特許発明1)に絞って、審理結果を紹介する。

異議申立日の3か月後(2022年12月15日)、取消理由通知書が送付された。

取消理由通知は、以下の4点であった。

(1)取消理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)

(2)取消理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)

(3)取消理由3(甲第3号証の1に基づく新規性・進歩性)

(4)取消理由4(甲第4号証の1に基づく新規性・進歩性)

各取消理由についての審判官の説明は、以下のようであった。

(1)取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について

甲第1号証には、以下の甲1発明が記載されている。

<甲1発明>「大根、胡瓜、しその実、しそ、生姜、漬け原材料[しょうゆ、還元水あめ、醸造酢、食塩、清酒、昆布エキス、酵母エキス、香辛料]、紅麹色素、及び、クチナシ色素を原材料とする、しその実漬。」“

本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、

“甲1発明の「しょうゆ」、「醸造酢」は、本件特許発明1の「水性媒体」に相当する。

“甲1発明の大根、胡瓜、しその実、しそ、及び生姜”は、甲1の記載からみて、“細片として存在することは明らかであ”り、“本件特許発明1の「天然物の細片」に相当する。”

“甲1発明の「紅麹色素」は、本件特許発明1の「モナスカス色素」に相当する。”

“甲1発明の「クチナシ色素」は“、甲1の記載からみて、”「クチナシ黄色素」であることは明らかであ“り、”甲1発明の「クチナシ色素」は、本件特許発明1の「カロテノイド色素」に相当する。“

“甲1発明の「しその実漬」は、本件特許発明1の「食品組成物」に相当する。”

“甲1発明は、その原材料からみて、ヘム鉄やコチニール赤色素を含まないものであるから、本件特許発明1の「(ただし、ヘム鉄と、ベニコウジ色素及び/又はアナトー色素との組み合わせを含む食品組成物、並びに、コチニール赤色素を含む食品組成物を除く)」との発明特定事項を満たすことも明らかである。”

“してみると、両者の間に相違点はな”く、“したがって、本件特許発明1は、甲1発明である。また、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである“

(2)取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について

・甲第2号証には、以下の甲2発明が記載されている。

<甲2発明>「りんご、醤油、砂糖、玉ねぎ、りんご酢、アミノ酸液、コチュジャン、白ごま、味噌、豆板醤、蜂蜜、唐辛子、にんにく、食塩、ローストガーリック、蛋白加水分解物、ごま油、増粘剤(加工でん粉)、パプリカ色素、及び、ベニコウジ色素を原材料とし、りんご、玉ねぎ、にんにく、及び、ローストガーリックの細片を含む、焼き肉のたれ。」”

本件特許発明1と甲2発明とを対比すると

“甲2発明の「醤油」、「りんご酢」、「アミノ酸液」は、本件特許発明1の「水性媒体」に相当する。”

“甲2発明の「りんご、玉ねぎ、にんにく、及び、ローストガーリックの細片」は、本件特許発明1の「天然物の細片」に相当する。”

“甲2発明の「ベニコウジ色素」は、本件特許発明1の「モナスカス色素」に相当する。”

“甲2発明の「パプリカ色素」は、本件特許明細書の記載に基づけばトウガラシ色素であり、トウガラシ色素は、本件特許発明1の「カロテノイド色素」であ”り、“そうすると、甲2発明の「パプリカ色素」は、本件特許発明1の「カロテノイド色素」に相当する。”

“甲2発明の「焼き肉のたれ」は、本件特許発明1の「食品組成物」に相当する。”

“甲2発明は、その原材料からみて、ヘム鉄やコチニール赤色素を含まないものであるから、本件特許発明1の「(ただし、ヘム鉄と、ベニコウジ色素及び/又はアナトー色素との組み合わせを含む食品組成物、並びに、コチニール赤色素を含む食品組成物を除く)」との発明特定事項を満たすことも明らかである。”

・“してみると、両者の間に相違点はな”く、“したがって、本件特許発明1は、甲2発明である。また、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)取消理由3(甲3の1に基づく新規性・進歩性)について

・甲第3号証の1には、以下の甲3発明が記載されている。

<甲3発明>

「果糖ぶどう糖液糖、アミノ酸液、みそ、醸造酢、魚醤(魚介類)、魚介エキス(オキアミ、鮭、アサリ、ホタテ)、食塩、りんごパルプ、チキンエキス、砂糖、にんにく、乳酸発酵調味料、唐辛子、酵母エキス、かつお節、調味料(アミノ酸等)、パプリカ色素、ベニコウジ色素、酸味料、香辛料抽出物、及び、カラメル色素を原材料とし、りんごパルプ及びにんにくの細片を含む、キムチ鍋の素。」“

・本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、

“甲3発明の「アミノ酸液」、「醸造酢」、及び、「魚醤(魚介類)」は、本件特許発明1の「水性媒体」に相当する。”

“甲3発明の「りんごパルプ及びにんにくの細片」は、本件特許発明1の「天然物の細片」に相当する。”

“甲3発明の「ベニコウジ色素」は、本件特許発明1の「モナスカス色素」に相当する。”

“甲3発明の「パプリカ色素」は、本件特許明細書の記載に基づけばトウガラシ色素であり、トウガラシ色素は、本件特許発明1の「カロテノイド色素」であ”り、“そうすると、甲3発明の「パプリカ色素」は、本件特許発明1の「カロテノイド色素」に相当する。”

“甲3発明の「キムチ鍋の素」は、本件特許発明1の「食品組成物」に相当する。”

“甲3発明は、その原材料からみて、ヘム鉄やコチニール赤色素を含まないものであるから、本件特許発明1の「(ただし、ヘム鉄と、ベニコウジ色素及び/又はアナトー色素との組み合わせを含む食品組成物、並びに、コチニール赤色素を含む食品組成物を除く)」との発明特定事項を満たすことも明らかである。”

・“してみると、両者の間に相違点はな”く、“したがって、本件特許発明1は、甲3発明である。また、本件特許発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)取消理由4(甲4の1に基づく新規性・進歩性)について

・甲第4号証の1には、以下の甲4発明が記載されている。

<甲4発明>「植物油脂、にんにく、ブイヨンパウダー、マーガリン、乾燥玉ねぎ、トマトペースト、食塩、チキンエキス、酵母エキスパウダー、こしょう、ターメリック、サフラン、増粘剤(加工でん粉)、着色料(カロチノイド、紅麹)、調味料(アミノ酸等)、及び、香料を原材料とする、パエリアの素。」 “

本件特許発明1と甲4発明とを対比すると、

“甲4発明の「トマトペースト」は、本件特許発明1の「水性媒体」に相当する。”

“甲4の記載に基づけば甲4発明のパエリアの素において、にんにく及び乾燥玉ねぎが細片の状態で存在していることは明らかである。そうすると、甲4発明の「にんにく」、及び、「乾燥玉ねぎ」は、本件特許発明1の「天然物の細片」に相当する。”

“甲4発明の「紅麹」は、本件特許発明1の「モナスカス色素」に相当する。”

“甲4発明はサフランを含んでおり、サフラン中にはサフラン色素が含まれ”、“サフラン色素は本件特許発明1の「カロテノイド色素」に相当するから、甲4発明は、本件特許発明1の「カロテノイド色素」なる事項を有している。”

“甲4発明は、その原材料からみて、ヘム鉄やコチニール赤色素を含まないものであるから、本件特許発明1の「(ただし、ヘム鉄と、ベニコウジ色素及び/又はアナトー色素との組み合わせを含む食品組成物、並びに、コチニール赤色素を含む食品組成物を除く)」との発明特定事項を満たすことも明らかである。”

・“してみると、両者の間に相違点はな”く、“したがって、本件特許発明1は、甲4発明である。また、本件特許発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

取消理由通知に対して、本特許権者は、意見書及び訂正請求書を提出した。

訂正は、天然色素の種類の限定と組み合わせについての限定で、訂正は認められ、特許請求の範囲は、以下のように訂正された。

【請求項1】

水性媒体と、天然物の細片とを含み、かつ、

天然色素として下記の(i):

(i)モナスカス色素と、カロテノイド色素との組み合わせ

を含む、前記の水性媒体と、前記の天然物の細片とが、前記の組み合わせた色素

の色に着色された食品組成物(ただし、ヘム鉄と、ベニコウジ色素及び/又はア

ナトー色素との組み合わせを含む、食品組成物、並びに、コチニール赤色素を含

む食品組成物を除く)。

【請求項2】~【請求項7】 省略

訂正された特許請求の範囲に対して、依然として取消理由が解消されていないとして、再度、取消理由が通知された。

本特許権者は、取消理由通知に対して、意見書及び訂正請求書を提出した。

訂正は認められ、特許請求の範囲は、以下のように訂正された。

【請求項1】

水性媒体と、天然物の細片とを含み、かつ、

天然色素として下記の(i):

(i)モナスカス色素と、カロテノイド色素との組み合わせを含む、食品組成物(ただし、ヘム鉄と、ベニコウジ色素及び/又はアナトー色素との組み合わせを含む、食品組成物、並びに、コチニール赤色素を含む食品組成物を除く)であって、

前記天然物が、しょうが、大根、わさび及びにんにくから選択される1以上であり、

前記天然物の細片(湿重量)が、食品組成物の全量あたり20~99.5質量%であり、

モナスカス色素が、ベニコウジ黄色素及びベニコウジ色素から選択される1以上であり、

カロテノイド色素が、アナトー色素、オレンジ色素、デュナリエラカロテン、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素及びサフラン色素から選択される1以上である、

食品組成物。

【請求項2】~【請求項7】 省略

再度の訂正によって、請求項1は、天然色素が、モナスカス色素とカロテノイド色素との組み合わせに限定され、天然物、天然物細片の含有量、並びにモナスカス色素とカロテノイド色素の種類も限定された。

審判官は、以下に説明する理由により、再度訂正後の請求項1について、以下の理由で、“令和5年3月30日付けで通知した取消理由にはいずれも理由がないと判断”した。

(1)取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について

・本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、以下の相違点が認められる。

<相違点1-1> 省略

<相違点1-2> 「カロテノイド色素」に関し、本件特許発明1においては「カロテノイド色素が、アナトー色素、オレンジ色素、デュナリエラカロテン、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素及びサフラン色素から選択される1以上である」(以下、“本件特許発明1色素要件”と略す)と特定されるのに対し、甲1発明においては「クチナシ色素」である点

相違点1-2の「クチナシ色素」は、“本件特許発明1色素要件”を満たさないことから、“相違点1-2は実質的な相違点である。

・“してみると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえない。

また、甲1発明は上市された商品であるし、他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1発明において、「クチナシ色素」を他の色素に変更する動機付けはない。

(2)  取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について

・ 本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、以下の相違点が認められる。

<相違点2-1> 省略

<相違点2-2>「カロテノイド色素」に関し、本件特許発明1においては「カロテノイド色素が、アナトー色素、オレンジ色素、デュナリエラカロテン、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素及びサフラン色素から選択される1以上である」と特定されるのに対し、甲2発明においては「パプリカ色素」である点

相違点2-2の「パプリカ色素」は、“本件特許発明1色素要件”を満たさないから、“相違点2-2は実質的な相違点である。”

”してみると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明であるとはいえない。

また、甲2発明は上市された商品であるし、他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲2発明において、「パプリカ色素」を他の色素に変更する動機付けはない。”

(3 )取消理由3(甲3の1に基づく新規性・進歩性)について

・本件特許発明1と甲3発明とを対比すると以下の相違点が認められる。

<相違点3-1> 省略

<相違点3-2> 「カロテノイド色素」に関し、本件特許発明1においては「カロテノイド色素が、アナトー色素、オレンジ色素、デュナリエラカロテン、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素及びサフラン色素から選択される1以上である」と特定されるのに対し、甲3発明においては「パプリカ色素」である点

相違点3-2の「パプリカ色素」は、“本件特許発明1色素要件”を満たさないから、“相違点3-2は実質的な相違点である。”

・“してみると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。

また、甲3発明は上市された商品であるし、他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲3発明において、「パプリカ色素」を他の色素に変更する動機付けはない。

(4)取消理由4(甲4の1に基づく新規性・進歩性)について

・本件特許発明1と甲4発明とを対比すると、以下の相違点が認められる。

<相違点4>「天然物の細片」に関し、本件特許発明1においては「天然物の細片(湿重量)が、食品組成物の全量あたり20~99.5質量%であり」と特定されるのに対し、甲4発明が当該特定事項を満たすかが明らかでない点

・“甲4発明の「ごちそうパエリア」は、甲4の1の製品の外観図からみて液状の製品であってその大部分が液体であることや、甲4の第3頁第一番目の図における細片の量からみて、甲4発明の「天然物の細片(湿重量)」は、食品組成物の全量あたり20%以上であるとはいえない。

・“したがって、甲4発明が「天然物の細片(湿重量)が、食品組成物の全量あたり20~99.5質量%」を満たすとはいえず、相違点4は実質的な相違点である。してみると、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえない。

・“甲4発明の「ごちそうパエリア」は液状の製品であってその大部分が液体であるし、他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲4発明において、「天然物の細片(湿重量)が、食品組成物の全量あたり20~99.5質量%」とする動機付けはない。