(57)特許を巡る争いの事例;カゴメ緑色飲料特許

カゴメ株式会社の特許第5994160号は、小松菜などの緑色野菜を含有する容器詰飲料の色合い劣化の抑制に関する。伊藤園から異議申立され、カゴメは飲料に使用する緑色野菜を破砕されたもの等に限定する訂正を行ったが、進歩性無しと判断され、特許は取り消された。

カゴメ株式会社の特許第5994160号「容器詰緑色野菜含有飲料及びその製造方法、並びに容器詰緑色野菜含有飲料における色合い劣化抑制方法」を取り上げる。

 

特許公報の特許請求の範囲は、以下の通りである

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPB_5994160/8D8B0410FFF5BC744BFE6D45FC245138)。

【請求項1】

容器詰緑色野菜含有飲料であって、

その流通温度帯は、チルド帯であり、

そのpHは、4.6乃至6.5であり、かつ、

その製造から11日後の-a/b値は、0.1以上である、

もの。

(請求項2以下、省略)

 

緑色野菜として、小松菜や大麦若葉、クレソン、ホウレンソウ、ケールが例示されている。

容器詰緑色野菜含有飲料が直面している課題の一つは、見た目におけるフレッシュ感であり、具体的には、色合いである。フレッシュ感を実現する方法の1つは、食品添加物であり、加熱殺菌であり、その程度もより強いものとなる。

容器詰緑色野菜含有飲料のpHが所定の範囲内にすることによって、野菜本来の風味及び色合いが両立できると書かれている。

 

公開公報の特許請求の範囲は、以下のようである (特開2016-131519

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H28131519/DB016864770F825B1A9E661C05E82999)。

【請求項1】

容器詰緑色野菜含有飲料であって、

そのpHは、4.6乃至6.5であり、かつ、

その-a/b値は、0.1以上である、

もの。

(請求項2以下、省略)

 

「流通温度帯はチルド帯」「製造から11日後の」-a/b値の

2つの限定を加えることによって、特許査定されている。

 

出願日は平成27年1月19日、審査請求は平成27年8月28日で、出願後7カ月目に早期審査請求されている。

公開公報発行日(平成28725日)は、特許査定日(平成28年7月14日)の後であり、特許公報の発行日(平成28921日)は公開公報発行日の2カ月後である。

 

特許公報発行日の半年後(平成29年3月21日)に異議申立された(2017-700287)が、異議申立人の一人は伊藤園所属である。

 

審理の結論は、以下の通りである。

特許第5994160号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7、8について訂正することを認める。

特許第5994160号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。

 

カゴメは特許請求の範囲を以下のように訂正した。

【請求項1】

容器詰緑色野菜含有飲料であって、

その流通温度帯は、チルド帯であり、

そのpHは、4.6乃至6.5であり、かつ、

その製造から11日後の-a/b値は、0.1以上であり、

それが含有するのは、破砕された緑色野菜、及び、

この緑色野菜とは異なる野菜又は果実であり、

前記破砕された緑色野菜は、その破砕前に加熱されていないものである、

もの。

(請求項2以下、省略)

 

緑色野菜を「破砕された緑色野菜、及び、この緑色野菜とは異なる野菜又は果実であり、前記破砕された緑色野菜は、その破砕前に加熱されていないもの」という限定を加えた。

審判官は、本発明と、異議申立人提出の引用例2(特開平8-308542号公報)とを対比させて、以下の3点の相違点があるとした。

[相違点1-1]引用例には、「その流通温度帯は、チルド帯であり」、「そのpHは、4.6乃至6.5であ」るのという特定はなされていない、

[相違点1-2]引用例には、緑色野菜が、「その破砕前に加熱されていないものである」という特定はなされていない、

[相違点1-3]引用例には、「破砕された緑色野菜」が「ほうれん草」のみである。

 

上記相違点について、引用例において、上記相違点を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、また、本件発明1の奏する効果をみても、特別なものではなく、当業者が予測し得る範囲内のものあると判断した。

そして、その他の請求項も含めて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、取り消されるべきものであると結論された。

なお、本特許は分割出願(特願2016-152258、特開2017-6134)されている。

既に拒絶査定になり、現在、拒絶査定不服審判中である

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/PU/JPA_H29006134/C034C1D601A046A61A9E886FC0862685)。