【30】無効資料調査 ~非特許文献資料調査~

非特許文献の調査は、特許文献調査と比較して、体系的かつ網羅的に検索することは困難であり、調査に費用・時間・労力を要する。

検索でヒットした文献を読み込んで、そこから無効化のヒントを得ることや、孫引きなどで有効な資料を見つけていくという戦術も加味しておいた方が現実的と思われる。

特許文献で無効化に有効な先行技術文献が見つからなかっ場合には、無効資料調査の範囲を非特許文献まで拡げることになる。

以下の文献には、特許無効化の観点も含めて、非特許文献資料の調査の考え方がまとめられている。

“非特許文献調査について” 角田朗(2017年)http://www.tsunoda-patent.com/doc/2017_06chizaikanri.pdf

上記文献には、非特許文献の調査は、特許文献調査と比較して、以下のような困難性があると指摘されている。

(1)技術分類が整備されていない。

(2)論文の全文を検索可能なシステムが極めて少ない。

(3)データベースごとに収録されている情報が異なり,網羅性が高くない。

(4)特許公報とは異なり,非特許文献の入手には費用や時間を要することが多い。

(5)過去の製品カタログや取扱い説明書はデータベース化されておらず,検索及び入手が困難。

上記を私なりに説明すると、以下の2点になる。

  • 非特許文献を体系的かつ網羅的に検索することは困難である。

非特許文献には、特許分類のような詳細な技術分類が付与されていない。検索で使用できる検索キーは、文献のタイトル、要約、著者名、著者所属、キーワード等に限られ、また、全文検索が可能なデータベースは非常に少ない(特に日本語)。

  • 特許文献調査と比較して、非特許文献調査は費用・時間・労力を要する。

検索でヒットした資料の見るためには、入手する必要がある。オープンソースの文献も多くなっているが、ために費用がかかることが多い。紙資料の場合もあり、資料取り寄せだけで時間がかかる場合がある。また、資料が入手できない場合もある。

そして、要約の記載など部分的情報でヒット文献なので、文献を読み込むことに労力が要し、しかも、無効化につながる記載がある確率は、特許文献よりも低い。

したがって、特許文献調査と比較して、効果的・効率的に調査することが難しい。

過去の製品カタログや取扱い説明書やインターネット情報については以前に説明したので、そちらを参照ください

(【24】無効資料調査 ”下位概念で潰す” ~公然実施の商品をさがす~

https://patent.mfworks.info/2019/08/03/post-2272/

【28】無効資料調査~周辺特許と周辺情報の調査~https://patent.mfworks.info/2020/01/19/post-2707/)。

上記文献には、非特許文献の検索を行うためのデータベースが紹介されている。

検索費用を抑えたければ、無料のデータベースを使用することになる。

具体的には、”JPlatPat”(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0100)の非特許文献のメニューや、科学技術振興機構(JST)の科学技術情報探索サービスである”J-GLOBAL” (https://jglobal.jst.go.jp/)が挙げられる。

これらには、公開技報、マニュアル、単行本、国内技術雑誌、非技術雑誌、外国学会論文、国内学会論文、企業技報、団体機関誌、予稿集が収録されている。

英語であれば、“Google Scholar”(https://scholar.google.co.jp/)が挙げられる。

論文、書籍、テクニカルレポートなどの情報が検索できる。具体的な検索方法については、以下を参照ください。

”通信教育課程生向けガイド: Google Scholarで海外論文を探す”

https://libguides.lib.keio.ac.jp/c.php?g=62989&p=5252066

”Google( Scholar)から始める文献の集め方”

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/70512/1/201804_2J.pdf

”「Google Scholar 活用法」 講習会テキスト”

https://www.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/manual/guidance_gs.pdf

中国語で中国科学技術文献を検索するデータベースとしては、”CNKI”(中国知网 https://www.cnki.net/)や”百度”(BAIDU http://www.baidu.com/)が挙げられる。

検索方法については、以下を参照ください。

”中国の雑誌記事・論文の探し方”https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-38.php

”中国語文献の探し方”https://www.library.osaka-u.ac.jp/doc/2018_serching_chinese_literatures.pdf

日本語で非特許文献を全文検索できるデータベースとしては、国立国会図書館の”次世代デジタルライブラリー”(https://lab.ndl.go.jp/dl/)があるが、著作権の保護期間が満了になった資料が対象なので、無効資料調査での活用は難しい。

英語では、”GoogleBooks”で、すべての書籍ではないが、全文検索可能である(https://books.google.co.jp/)。検索方法は、以下を参照ください。

”Google を使って文献検索”http://www.tufs.ac.jp/common/library/guide/guidance/8_Google.pdf

”Google ブックスの利用方法”https://support.google.com/websearch/answer/43729?hl=ja

中国語では、上記した”CNKI”(中国知网)に全文検索機能がある(http://gb.oversea.cnki.net/Kns55/)。”CNKI”の検索方法は、以下を参照ください。

”CNKI 中国学術雑誌全文データベース(CAJ)の使い方”

https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-63.php

非特許文献の場合、網羅的と言えるようなデータベースがないのが実情である。

検索式の工夫も大事だが、費用や時間の面で制約が出てくることもある。

非特許文献には、特許文献と比較して、無効化したい特許に関する周辺技術情報が客観的に記載されている可能性がある。

例えば、それまで考えたことがない新たな無効理由につながり得る情報が記載されているかもしれない。

また、引用されている関連文献に、無効化につながる資料が記載されている可能性がある。

非特許文献調査を行う場合、検索ヒットした文献を読み込んで、そこから無効化のヒントを得たり、孫引きなどで有効な資料を見つけていくという戦術も加味しておいた方が現実的と思われる。