(10)特許権で稼ぐ ~ライセンスで収益化~

他企業に特許発明の実施を許可(ライセンス)すると、実施料の支払いを受けることができる。実施料は、一般に売上金額に対して数%。

特許権は売買対象の対象となる資産である。特許権の取引は、2016年には世界で6000億ドル(1ドル110円換算で、66兆円)にもなると言われている。

もう一つの特許権の収益化の方法が、特許のライセンス収入である。

ライセンス収入とは、他企業に特許発明の実施を許可(実施許諾、ライセンス)するかわりに、他企業から実施料(ロイヤルティ、ロイヤリティ、特許使用料)の支払いを受けることによって得られる収入で、実施料はいくつかの要素を考慮して決められている。

実施料は、一般的に売上に対して、何%(実施料率)と設定される。

特許法102条3項は特許損害の額の推定等に関する条項で、裁判例等を見ると、損害額の推定する際には、損害賠償額は、主に、実施料率の「相場」、「特許発明の侵害品売上・利益への貢献度合い」、「原告と被告の関係」の要素を考慮されている。ライセンスにおいても上記の要素を勘案して決められている。

実施料率の「相場」は、一般にライセンス契約の内容が公開されることはないことから実態は明確でないが、よく引用されるのが、発明協会研究センター編「実施料―技術契約のためのデータブック」(発行 社団法人発明協会)(2003))に記載されている実施料率で概ね1~5%である。

また、平成21年度の特許庁の報告書によれば、国内アンケート調査の結果は、特許権のロイヤルティ料率の平均値は、業界全体で3.7%、最低は電機分野の2.9%、最高はバイオ・製薬分野の6.0%である。司法決定の場合は平均値4.2%(知財全体と思われる)となっている。ちなみに、米国での司法決定ロイヤルティ料率の平均値は10.3%である。

スマートフォンの価格の約30%は特許使用料と言われているようだが、越後製菓の「切り餅」特許訴訟の判決では、3%を超えることはない、及び2%と認定している。

数%の実施料率であっても、利益率が低い商品であれば、経営に対するインパクトは大きい。また、国の経済に影響を及ぼし得る存在となってきている。

日本は、国際特許の出願数やその使用料収入では、米国に次ぐ第2位の位置にある。

2016年の通商白書では、「サービス貿易の潜在的可能性」の項目が設けられ、「海外現地法人からのロイヤルティを中心とする「知的財産権等使用料」の増加(2.0兆円増)収支を引き上げた。」とコメントされている。また、新聞などのメディアには、日本の技術貿易は年々巨額の黒字を出しているので、日本は技術で世界をリードしているかのような印象を与えている記事がある。

しかし、使用料を受け取っている企業はアメリカに工場を持つ自動車関連企業がほとんどで、アメリカの子会社から、日本の親会社に支払われているロイヤルティが大半を占めている。しかも、日本で開発して技術をアメリカで操業する工場に貸与することで得られるロイヤルティということである。また、研究投資がどれだけの特許使用料収入を生むかの比率も低く、日本の特許発明は、内向きの利用であり、数で勝負しているということになる。

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(引用文献)

IPの収益化

https://maierandmaier.com/ja/%E6%A5%AD%E5%8B%99%E5%88%86%E9%87%8E/ip%E3%81%AE%E5%8F%8E%E7%9B%8A%E5%8C%96/

特許法 102 条 3 項に規定する「特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額」の解釈についての一考察  https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201504/jpaapatent201504_093-103.pdf

4-1-2.実施料率認定の考慮要素  http://ipfbiz.com/archives/songai_412.html

スマートフォンの価格の約30%は特許使用料 https://mobile.srad.jp/story/16/12/22/0831248/

平成21年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 ライセンス・特許を受ける権利に係る制度の在り方に関する調査研究報告書 ~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~ http://www.jiam.or.jp/2009_06.pdf

特許権の価値評価における公認会計士と弁理士との連携

https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201509/jpaapatent201509_076-088.pdf

世界の国際特許出願件数 国別ランキング・推移 https://www.globalnote.jp/post-5380.html

第1節 サービス貿易の潜在的可能性 http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2016/2016honbun/i2210000.html

2017年度わが国貿易収支、経常収支の見通し – 日本貿易会

http://www.jftc.or.jp/research/statistics/mitoshi_pdfs/2017_outlook.pdf

技術貿易は黒字だがこれでいいのか日本 https://www.hatsumei.co.jp/column/index.php?a=column_detail&id=220

データで探る日本の「発明力」 世界で稼げるか https://vdata.nikkei.com/econofocus/invention/

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